【ST】STM32F7とは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

STM32F7シリーズは、STマイクロエレクトロニクス(以下ST社)のCortex-M7コアを搭載した汎用マイクロコントローラです。STM32F7シリーズは、DSPとFPU命令による高度な機能を備えています。

STM32F7の製品ライン

製品ライン 概要
STM32F7x0バリュー・ライン 超高性能STM32F7シリーズで、コスト効率を高めたエントリ・レベル・ライン
STM32F7x2 超高性能STM32F7シリーズのエントリ・レベルSTM32F7x2ライン
STM32F7x3 超高性能STM32F7シリーズでUSB HS PHYを内蔵したSTM32F7x3ライン
STM32F7x5 超高性能STM32F7シリーズでメモリ拡張製品STM32F7x5ライン
STM32F7x6 超高性能STM32F7シリーズでLCDコントローラ内蔵STM32F7x6ライン
STM32F7x7 超高性能STM32F7シリーズでJPEGコーデック内蔵STM32F7x7ライン
STM32F7x8/7×9 超高性能STM32F7シリーズでMIPI-DSI I/F対応STM32F7x8/7×9ライン

出典:STM32F7シリーズ

STM32F7の仕様

出典:STM32F7シリーズ

STM32F7とは

STM32ファミリのマイコンは、主に下記の5つに分類されています。

  • 幅広いアプリケーションの開発を容易にする「マイクロプロセッサ」例:STM32MP1
  • 最大1082 CoreMarkの高性能を実現した「ハイパフォーマンスマイコン」
  • 汎用マイコンである「メインストリームマイコン」
  • 消費電力を抑えた「超低消費電力マイコン」
  • マイコンと無線トランシーバを集積したSoC「ワイヤレスマイコン」例:STM32WB、STM32WL
SoC(読み方:エスオーシー、ソック)とは

SoCとは、プロセッサの種類の一つ。SoCとは、システムに必要なあらゆる機能を1つのチップ上に搭載したもの。SoCは、「システムを一つのチップ上に載せる」を意味する「System on a Chip」の略。システム全体をチップ上に搭載することで、小型化が可能になるというメリットがある。また、システムの内部接続により消費電力も抑えられる。

STM32F7シリーズは、高性能な「ハイパフォーマンスマイコン」に属します。

STM32F7とは

STM32F7シリーズは、ARM® Cortex®-M7をベースとし、STのARTアクセラレータTMにより、Flashメモリからのコード実行時に、216MHzで1082CoreMark/462DMIPSの処理性能を実現します。STM32F4シリーズの最大2倍のDSP性能を持ち、電力効率にも優れています。
外付けメモリ使用時でも、L1キャッシュ(最大I/D 16KB + 16KB)により、高い性能を維持します。また、他のSTM32シリーズとのピン配置互換性およびSTM32F4シリーズとのコード互換性があるため、既存のSTM32開発エコシステムを利用可能です。

出典:STM32F7シリーズ

DMIPSとは

CPUの性能評価で用いる値の一つ。Dhrystone(読み方:ドライストーン)というベンチマークプログラムをベースにしている。

Dhrystone(ドライストーン)とは?意味、特徴、定義をわかりやすく解説

ハイパフォーマンスマイコンの特徴は、高性能で充実した機能と豊富なコネクティビティを持つマイコンである、という点です。

STM32F7は、DSPとFPU命令により、性能を高めています。

DSP(デジタルシグナルプロセッサ・Digital Signal Processor)とは

DSPとは、積和演算の高速な処理に特化したプロセッサのことです。主にオーディオや画像の信号処理や、モータの制御、計測、遠隔通信などの処理において使用されています。

この他、DSPとFPU機能を併せ持つマイコンには、STM32F4があります。STM32F7は、STM32F4に比べて、DSPの性能が最大で2倍の上位モデルです。

また、STM32F7は、ピン配置、コードについて、STM32F4と互換性があります。

これに加えて、STM32F7とSTM32F4は、アーキテクチャについてはどちらもARMv7E-M、コアについてはそれぞれCortex-M7とCortex-M4であるため、100%バイナリ互換となっています。

以上のように、STM32F7とSTM32F4は、高い互換性があることから、少ない工数で相互に移植が可能です。

STM32F4シリーズとは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

STM32F7シリーズの入手方法

STM32F7シリーズのマイコンは、ST社の販売代理店や下記のオンラインショップなどで購入できます。

STM32F7の開発環境

STM32F7に対応した代表的な開発環境は、下記の通りです。

  • IAR Embedded Workbench for ARM
  • Arm Keil MDK
  • STM32CubeIDE
  • SW4STM32
  • Embedded Studio

STM32F7評価ボード

メーカー純正評価ボードのEVAL・DISCOVERY・Nucleo

STM32F7評価ボードには、下記の3種類があります。

  • EVAL(エバル)ボード
  • Discovery(ディスカバリー)ボード
  • Nucleo(ニュークリオ)ボード

これらは、ST社から提供される純正の評価ボードであり、USBケーブルやPCを用意するだけで、簡単・安価に開発をスタートできます。

DISCOVERY・Nucleoの特徴

EVAL、DISCOVERY、Nucleoには、それぞれ次の特徴があります。

EVALの特徴
  • LCDやUSBコネクタなどの機能が豊富なため、ボード上で実際にアプリケーションを開発することが可能
  • STM32F7のほぼ全ての機能が評価可能
DISCOVERYの特徴
  • EVALボードに比べて安価
  • 実装されているデモサンプルが豊富
  • STM32F7単体評価に最適
Nucleoの特徴
  • DISCOVERYボードに比べて安価
  • Arduino互換のPinヘッダーを搭載
  • メーカーズなどのプロトタイプ向け

以上のように、デバイスのフル機能を評価したい場合はEVAL、STM32F7の単体評価をしたい場合はDiscovery、Arduino互換ボードを使ったプロトタイプ開発をしたい場合はNucleoを選択します。

STM32F7に対応したEVALボード

STM32F7シリーズが評価できるEVALボードは4種類用意されています。

搭載マイコン データシート
STM32746G-EVAL STM32F746NG
STM32756G-EVAL STM32F756NG STM32756G-EVALのデータシート
STM32F769I-EVAL STM32F769NI STM32F769I-EVALのデータシート
STM32F779I-EVAL STM32F779NI

STM32F7に対応したDISCOVERYボード

STM32F7シリーズが評価できるDISCOVERYボードは4種類用意されています。

搭載マイコン データシート
32F723EDISCOVERY STM32F723IE 32F723EDISCOVERYのデータシート
32F746GDISCOVERY STM32F746NG 32F746GDISCOVERYのデータシート
32F769IDISCOVERY STM32F769NI 32F769IDISCOVERYのデータシート

STM32F7に対応したNucleoボード

搭載マイコン データシート
I-NUCLEO-NETX I-NUCLEO-NETXのデータシート
NUCLEO-F722ZE STM32F722ZE NUCLEO-F722ZEのデータシート
NUCLEO-F746ZG STM32F746ZG NUCLEO-F746ZGのデータシート
NUCLEO-F767ZI STM32F767ZI NUCLEO-F767ZIのデータシート

STM32F7の対応OS

STM32F7に対応しているOSは、以下の通りです。

  • ThreadX
  • embOS
  • embOS-MPU
  • embOS-safe
  • μT-Kernel
  • MicroEJ
  • NORTi Professional II
  • UCT μT-Kernel 2.0
  • TOPPERS-Pro/ASP
  • TOPPERS-Pro/HRP2
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact(弊社製品)
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(同上)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact」

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。

μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。

高性能リアルタイム処理向けRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard」

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standardは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOSです。

μC3/Standardは、高性能プロセッサがより高度なリアルタイム制御に耐えられるよう、割込み禁止時間を極力なくし、割込み応答性を最重要課題として設計したRTOSです。

ARM Cortex-Aシリーズ、ARM Cortex-Rシリーズだけでなく、高性能な ARM Cortex-MやRenesas RXシリーズにも対応しています。

STM32F7とμC3/Compactの導入事例

  • 産業用小型プリンタメーカー製 プリンタ用拡張インターフェース
  • 電機メーカー製 HEMS機器
  • 蛍光表示管(VFD)メーカー製 産業用装置
  • 電機メーカー製 有線LANインターフェースユニット