STM32F3シリーズとは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

STM32F3シリーズは、STマイクロエレクトロニクス(以下ST社)のCortex-M4コアを搭載した汎用マイクロコントローラです。STM32F3シリーズは、DSP命令に対応し、浮動小数点演算器(FPU)を搭載しています。

STM32F3の製品ライン

製品ライン 概要
STM32F301 高性能アナログ機能を搭載しコスト効率を高めるSTM32F301ライン
STM32F302 高性能アナログ機能を搭載したSTM32F302ライン
STM32F303 高性能アナログ機能を搭載し性能を重視したSTM32F303ライン
STM32F334 デジタル電源の電力効率を向上するSTM32F334ライン
STM32F373 16bit ΔΣADコンバータを集積したSTM32F373ライン
STM32F3x8 低電圧1.8Vで動作するSTM32F3x8ライン

出典:STM32F3シリーズ

STM32F3の仕様

出典:STM32F3シリーズ

STM32F3とは

STM32ファミリの製品ラインアップ

STM32ファミリのマイコンは、主に下記の5つに分類されています。

  • 幅広いアプリケーションの開発を容易にする「マイクロプロセッサ」例:STM32MP1
  • 最大1082 CoreMarkの高性能を実現した「ハイパフォーマンスマイコン」例:STM32F2、STM32H7など
  • 汎用マイコンである「メインストリームマイコン」例:STM32F1、STM32F3など
  • 消費電力を抑えた「超低消費電力マイコン」例:STM32L1、STM32L4など
  • マイコンと無線トランシーバを集積したSoC「ワイヤレスマイコン」例:STM32WB、STM32WL
SoC(読み方:エスオーシー、ソック)とは

SoCとは、プロセッサの種類の一つ。SoCとは、システムに必要なあらゆる機能を1つのチップ上に搭載したもの。SoCは、「システムを一つのチップ上に載せる」を意味する「System on a Chip」の略。システム全体をチップ上に搭載することで、小型化が可能になるというメリットがある。また、システムの内部接続により消費電力も抑えられる。

STM32F3シリーズは、汎用マイコンの「メインストリームマイコン」に属します。

STM32F3とは

STM32 F3シリーズは、ARM® Cortex®-M4をベースとし、72MHzで動作しDSP命令対応および浮動小数点演算器(FPU)を搭載しています。アプリケーション・レベルでのコスト削減と設計の単純化に貢献する充実したアナログ/デジタル・ペリフェラルの組み合わせにより、デジタル信号制御の設計に革新をもたらします。
CCM-SRAMによって重要なルーチン実行速度を上げる機能により、命令バスとデータ・バスに接続されたSRAMからゼロウェイトでコード実行されるため、Flash実行と比べて性能が43%向上します。
また、柔軟な相互接続マトリックスにより、ペリフェラル間の自律的な通信が可能で、CPUリソースと消費電力を節約します。システム実装はSTM32F3シリーズ内で共通で、ペリフェラル、IPセット、ピン配列が共有されているため、製品ライン間の移行も容易です。

出典:STM32F3シリーズ

STM32F3シリーズは、ARM Cortex-M4を搭載した汎用マイコンです。STM32F3は、DSP命令に対応しています。

DSP(デジタルシグナルプロセッサ・Digital Signal Processor)とは

DSPとは、積和演算の高速な処理に特化したプロセッサのことです。主にオーディオや画像の信号処理や、モータの制御、計測、遠隔通信などの処理において使用されています。

また、浮動小数点演算器(FPU)を搭載しています。

浮動小数点演算とは

CPUの機能の一つ。浮動小数点を用いた演算を行う。浮動小数点とは、小数データの表示形式の一つ。指数部と仮数部を用いた指数表記で表すことで、表現できる値の範囲を広げられる。

STM32F301/2/3ライン

STM32F301/2/3ラインは、STM32F3シリーズの中の、汎用製品ラインです。STM32F301/2/3ラインは、コストを重視したデバイスから、豊富なアナログ機能を搭載したデバイスまで対応しています。

STM32F334ライン

STM32F334ラインは、STM32F3シリーズの中の、デジタル・パワー・ラインです。STM32F334ラインは、デジタル電力変換アプリケーション用に設計されており、デジタル電源の電力効率を向上させます。

アプリケーションの具体例は、下記の通りです。

  • データ・サーバ
  • 電気通信基盤施設
  • ワイヤレス充電ポイント
  • 照明機器
  • 溶接機
  • デジタルSMPS(スイッチング電源)

出典:STM32F3シリーズ

STM32F373ライン

STM32F373ラインは、STM32F3シリーズの中の、高精度計測ラインです。STM32F373ラインは、16bitΔΣA / Dコンバータを搭載しています。

A/Dコンバータ(ADC)とは

A/Dコンバータとは、アナログ信号を入力し、デジタル信号を出力する装置のこと。マイコンはデジタル信号しか取り扱えないため、アナログ信号で測定したデータを、マイコンでも制御できるようになる。

このため、STM32F373ラインは、高精度測定や、負荷の重い信号処理が要求されるアプリケーションに最適です。

アプリケーションの具体例は、下記の通りです。

  • 携帯型医療機器
  • エントリー・レベルの家庭用オーディオ機器
  • バイオメトリック・センサ用センサ・ハブ
  • 携帯型フィットネス
  • ゲーム機
  • 計測機器

出典:STM32F3シリーズ

STM32F3x8ライン

STM32F3x8ラインは、STM32F3シリーズの中の、低電圧ラインです。STM32F3x8ラインは、1.8V ±8%で動作します。

ポイント
  • STM32F301/2/3ライン:汎用製品ライン
  • STM32F334ライン:デジタル・パワー・ライン
  • STM32F373ライン:高精度計測ライン
  • STM32F3x8ライン:低電圧ライン

STM32F3シリーズの入手方法

STM32F3シリーズのマイコンは、ST社の販売代理店や下記のオンラインショップなどで購入できます。

STM32F3の開発環境

STM32F3に対応した代表的な開発環境は、以下の通りです。

  • IAR Embedded Workbench for ARM
  • Arm Keil MDK
  • Embedded Studio
  • CubeIDE

STM32F3評価ボード

STM32F3評価ボードには、下記の3種類があります。

  • EVAL(エバル)ボード
  • Discovery(ディスカバリー)ボード
  • Nucleo(ニュークリオ)ボード

これらは、ST社から提供される純正の評価ボードであり、USBケーブルやPCを用意するだけで、簡単・安価に開発をスタートできます。

EVALボード・Discoveryボード・Nucleoボードの特徴

EVAL、DISCOVERY、Nucleoには、それぞれ次の特徴があります。

EVALの特徴
  • LCDやUSBコネクタなどの機能が豊富なため、ボード上で実際にアプリケーションを開発することが可能
  • STM32F3のほぼ全ての機能が評価可能
DISCOVERYの特徴
  • EVALボードに比べて安価
  • 実装されているデモサンプルが豊富
  • STM32F3単体評価に最適
Nucleoの特徴
  • DISCOVERYボードに比べて安価
  • Arduino互換のPinヘッダーを搭載
  • メーカーズなどのプロトタイプ向け

以上のように、デバイスのフル機能を評価したい場合はEVAL、STM32F3の単体評価をしたい場合はDiscovery、Arduino互換ボードを使ったプロトタイプ開発をしたい場合はNucleoを選択します

ポイント
  • デバイスのフル機能を評価したい場合はEVAL
  • STM32F3の単体評価をしたい場合はDiscovery
  • Arduino互換ボードを使ったプロトタイプ開発をしたい場合はNucleo

STM32F3に対応したEVALボード

STM32F3が評価できるEVALボードは、以下の2種類です。

ボード 搭載マイコン データシート
STM32303E-EVAL STM32F303VE STM32303E-EVALのデータシート
STM32373C-EVAL STM32F373VC STM32373C-EVALのデータシート

STM32F3に対応したDiscoveryボード

ボード 搭載マイコン データシート
32F3348DISCOVERY STM32F334C8 32F3348DISCOVERYのデータシート
STM32F3DISCOVERY STM32F303VC STM32F3DISCOVERYのデータシート

STM32F3に対応したNucleoボード

ボード 搭載マイコン データシート
NUCLEO-F301K8 STM32F301K8 NUCLEO-F301K8のデータシート
NUCLEO-F302R8 STM32F302R8 NUCLEO-F302R8のデータシート
NUCLEO-F303K8 STM32F303K8 NUCLEO-F303K8のデータシート
NUCLEO-F303RE STM32F303RE NUCLEO-F303REのデータシート
NUCLEO-F303ZE STM32F303ZE NUCLEO-F303ZEのデータシート
NUCLEO-F334R8 STM32F334R8 NUCLEO-F334R8のデータシート
P-NUCLEO-IHM001 P-NUCLEO-IHM001のデータシート
P-NUCLEO-IHM002 P-NUCLEO-IHM002のデータシート

STM32F3の対応OS

STM32F3に対応しているOSは以下の通りです。

  • embOS
  • embOS-MPU
  • embOS-safe
  • ThreadX
  • UCT μT-Kerenl 2.0
  • TOPPERS-Pro/ASP3
  • TOPPERS-Pro/ASP
  • TOPPERS-Pro/HRP2
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact(弊社製品)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact」

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。

μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。

小さいフットプリント
マイコンの小さなROM/RAMのみで動作するように最適化された最小2.4Kbyteのコンパクトなカーネル。メモリ容量が小さい安価なデバイスを使用する事ができます。
μC3/Configurator付属
選択・設定するだけでベースコードが生成できるコンフィギュレーションツール。開発時間の大幅な短縮や、コーディングミスの減少が可能。RTOSの初心者でも簡単に開発をスタートすることができます。
豊富なCPUサポート
業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。CPUの選択肢を広げ、機会費用を抑える事ができます。業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。ご使用予定のデバイスで直ぐに開発着手が可能で、ご質問に対して24時間以内の1次回答を徹底しています。
省電力対応
デフォルトで省電力機能がついているため、システム全体の省電力に貢献します。

詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。

資料ダウンロード(無料)

μC3のライセンスの種類・詳細

ライセンスの種類

ライセンスの種類は3つあります。

  • 研究開発用プロジェクトライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス
  • プラットフォームライセンス

研究開発用プロジェクトライセンス

研究開発用プロジェクトライセンスは、研究開発のみ可能なライセンスです。ライセンス購入時の段階で、製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めです。

研究開発用プロジェクトライセンスのライセンス費用は、このあとご紹介する開発量産用プロジェクトライセンスの60%の価格です。

有償の保守契約に加入中の場合、開発量産用プロジェクトライセンスのライセンス費用の40%オフの価格でアップグレードが可能です。

開発量産用プロジェクトライセンス

開発量産用プロジェクトライセンスは、研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンスとなります。開発量産用プロジェクトライセンスの対象製品の範囲には、1種類の製品型番だけでなく、その製品ファミリ(派生機種)が含まれます。

有償の保守契約に加入中の場合、プラットフォームライセンスのライセンス費用との差額でアップグレードが可能です。

プラットフォームライセンス

プラットフォームライセンスは、プロジェクトライセンスの対象範囲を広げたライセンスです。プラットフォームライセンスの対象製品は、1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリが範囲となります。サイトライセンスではございません。

※弊社のライセンスはプロジェクトライセンスの形式を採っております。ご購入時に該当プロジェクトの名称をご登録頂く必要があり、その際、「計測機器」などの抽象的な名称ではなく、具体的な名称を頂戴しております。

お客様のご要望をお聞きした上で適切な範囲を設定させて頂きますので、先ずは、担当営業にご相談下さい。

ポイント
  • 研究開発用プロジェクトライセンス:製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めなライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス:研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンス
  • プラットフォームライセンス   :1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリを範囲とするライセンス

ライセンスの詳細

  • ライセンス費用の金額・計算方法:ライセンス購入時の固定の一括払いのみでご使用いただけます
  • 開発人数制限 :無(ただし同プロジェクト内)
  • 提供形態 :ソースコード
  • 使用範囲 :定義されたプロジェクト内
  • 使用CPU :型番固定ではなくCPUシリーズ(例:STM32F4シリーズ)
  • μC3/ConfiguratorはCPUシリーズ毎に用意されています

ライセンスの価格などの詳細については、下記よりプロダクトガイドをダウンロードしてご覧ください。

資料ダウンロード(無料)

保守について

製品定価には契約日の翌月1日から6ヶ月分の無償保守が含まれています。その後、有償で保守を継続することが可能です。

また、年間保守費用は製品定価の40%になります。

無償保守期間終了後、継続して有償保守サービスにご加入いただいた場合は、製品定価の20%になります。(ただし、初年度分の保守とライセンスをセットで購入された場合は、初年度分に限り製品定価の15%になります。)

*研究開発用プロジェクトライセンスの保守費用は開発量産用プロジェクトライセンスの定価の20%になります。

保守サービスには以下が含まれています。

  • メールによる技術サポート(1営業日以内に1次回答)
  • 製品の無償バージョンアップ