SH-2A CPUとは、ルネサスエレクトロニクス(以下、「ルネサス」)のハイエンドマイコンです。SH-2A CPUは、多彩な周辺機能を内蔵したSH-2Aコアを搭載しています。
SH-2A CPUシリーズの製品ライン
- SH7200 シリーズ
- SH7210 シリーズ
- SH7216 シリーズ
- SH7243 シリーズ
- SH7280 シリーズ
SH-2A CPUシリーズの仕様
SH7200 シリーズの仕様
Bit Size | Program Memory(KB) | Data Flash(KB) | |
---|---|---|---|
SH7201 | 32 | 0 | 0 |
SH7206 | 32 | 0 | 0 |
SH7211 | 32 | 384, 512 | 0 |
SH7214 | 32 | 512, 768, 1024 | 32 |
SH7237 | 32 | 256, 512 | 32 |
SH7243 | 32 | 128, 256 | 0 |
SH7261 | 32 | 0 | 0 |
SH7285 | 32 | 512, 768 | 0 |
SH7286 | 32 | 512, 768, 1024 | 0 |
出典:SuperH RISC engine ファミリマイコン
SuperH RISC engine ファミリとは
SuperH RISC engine ファミリは、ルネサス社製のハイエンドマイコンです。
SuperH RISC engine ファミリが搭載しているコアは、以下の通りです。
- SH-2A:多彩な周辺機能を内蔵
- SH-4A:高速データ処理が可能
こちらの記事では、SH-2Aを搭載したシリーズを紹介します。
SH-2A CPUシリーズの特長
SH-2A CPUシリーズの特長は、以下の通りです。
- 周波数あたりの性能を高め、低消費電力を実現
- 旧シリーズの約3.5倍の性能
- 最短6クロックの割り込み応答
【特長1】周波数あたりの性能を高め、低消費電力を実現し、コストを低減
SH‐2Aは、CPUのアーキテクチャとして以下の2つを採用しています。
- スーパースカラ
- ハーバードアーキテクチャ
スーパースカラ
SH‐2Aは、スーパースカラを採用しています。
スーパースカラとは
スーパースカラとは、CPUを高速化するアーキテクチャの一つ。一度に複数の命令を読み込み、同時に実行できる。パイプライン処理を複数並列させて実現している。
パイプライン処理とは
パイプライン処理とは、コンピュータの高速化を図る技術のひとつ。パイプライン処理では、1つの命令を独立したステージに分割し、各ステージを並列的に実行する。これにより複数の命令がオーバーラップされ、処理が高速化される。
このためSH‐2Aは、1クロックで最大2命令の並列実行を可能にします。
ハーバードアーキテクチャ
またSH‐2Aは、ハーバードアーキテクチャを採用しています。
ハーバードアーキテクチャとは
ハーバードアーキテクチャとは、バスアーキテクチャの一つ。命令用とデータ用のバスを分ける構造を取っている。これにより、CPUが命令をフェッチしている間でも、データバスを用いてデータにアクセスが可能になる。
従来のSuperHシリーズでは、命令用とデータ用のバスを兼用していました。SH‐2Aではハーバードアーキテクチャの採用により、命令取込みとデータアクセスの競合が発生しません。これにより、メモリアクセスが連続する演算においても、大幅な性能低下は起こりません。
【特長2】旧シリーズの約3.5倍の性能
SH‐2Aは、200MHz動作時に360MIPS動作します。
MIPS(読み方:ミップス)
MIPSとは、CPUの処理速度を表す単位の一つ。MIPSとは、「毎秒100万回の命令」を意味する「Million Instructions Per Second」の略。1MIPSのCPUは、毎秒100万回の命令を処理できる。
旧シリーズのSH-2は、最大動作周波数80MHzで104MIPSの処理性能であるため、SH-2Aは、旧シリーズの約3.5倍の処理性能を実現しています。
MIPSについては、以下の記事をご覧ください。
【特長3】最短6クロックの割り込み応答
SH‐2Aは、レジスタの情報を格納するための専用レジスタを内蔵しています。
レジスタ
レジスタとは、演算や実行状態の保持に用いる記憶装置。高速に読み書きできるのが特徴。
通常のCPUでは、割り込みイベントが発生すると、①割り込み処理で使用する汎用レジスタの値をソフトウェアによる処理でスタックメモリに格納、②割り込みイベントに対応したアプリケーションの実行、という手順で処理を行います。
これに対し、SH-2Aでは、専用レジスタを内蔵し、ソフトウェアではなくハードウェアで退避を行います。このため、割り込みイベント発生時に、高速にアプリケーションプログラムの切り替えを実行できます。
また、旧シリーズでは、割り込みイベントが発生してから実際のアプリケーションプログラムを実行開始するまで、最小37サイクルが必要でした。これに対しSH‐2Aは、6サイクルで実行できます。
SH-2A CPUシリーズの入手方法
SH-2A CPUシリーズは、以下のルネサスの特約店・取扱店や、オンラインショップなどで購入できます。
SH-2A CPUシリーズの開発環境
SH-2A CPUシリーズに対応した代表的な開発環境は、以下の通りです。
- High-performance Embedded Workshop
- IAR Embedded Workbench
- 統合開発環境MULTI
SH-2A CPUシリーズの評価ボード
SH-2A CPUシリーズの評価ボードは、以下の通りです。
搭載MPU | 特徴 | 対象 | データシート | |
---|---|---|---|---|
AP-SH2A-6A | SH7269 | LCDインターフェースを搭載 | LCDを搭載した機器の開発がしたい方
教育・研修目的で使用したい方 |
AP-SH2A-6Aのデータシート |
AP-SH2A-5A | SH7264 | USB、CAN | CANやシリアルインターフェースなどの通信を用いて評価を行いたい方
教育・研修目的で使用したい方 |
AP-SH2A-5Aのデータシート |
AP-SH2A-4A | SH7216 | Ethernet | Ethernet機能を搭載した機器の開発がしたい方
教育・研修目的で使用したい方 |
AP-SH2A-4Aのデータシート |
AP-SH2A-6A
AP-SH2A-6Aは、アルファプロジェクト社製の評価ボードです。
AP-SH2A-6Aは、LCDインターフェースを搭載しています。このため、アルファプロジェクト社製のLCDキットを直接接続できます。
また、回路図やサンプルプログラムを公開しているため、教育用や研修用にも適しています。
これらの特長からAP-SH2A-6Aは、「SH-2A CPUシリーズを使ってLCDを搭載した機器の開発がしたい」という方や、教育・研修目的で使用したい方に最適の評価ボードです。
AP-SH2A-5A
AP-SH2A-5Aは、アルファプロジェクト社製の評価ボードです。
AP-SH2A-5Aは、CAN、USB、シリアルインターフェース等のインタフェースを搭載しています。
各種インターフェースコンバータや、別売りのCANトランシーバアダプタを使用すると、簡単にPCやCAN機器との通信が可能になります。
また、回路図やサンプルプログラムを公開しているため、教育用や研修用にも適しています。
これらの特徴からAP-SH2A-5Aは、「CANやシリアルインターフェースなどの通信を用いてSH-2A CPUシリーズの評価を行いたい」という方や、教育・研修目的で使用したい方に最適の評価ボードです。
AP-SH2A-4A
AP-SH2A-4Aは、アルファプロジェクト社製の評価ボードです。
AP-SH2A-4Aは、イーサネットコントローラをCPUに内蔵しています。また、Ethernetのサンプルプログラムを提供しています。
また、回路図やサンプルプログラムを公開しているため、教育用や研修用にも適しています。
これらの特長からAP-SH2A-4Aは、「SH-2A CPUシリーズを使ってEthernet機能を搭載した機器の開発がしたい」という方や、教育・研修目的で使用したい方に最適の評価ボードです。
SH-2A CPUシリーズの対応OS
SH-2A CPUシリーズに対応している主なOSは、以下の通りです。
- axLinux
- XTAL
- zxLinux
- 組み込みシステム向けLinux Algonomix
- CMX-RTX
- eT-Kernel
- RTA-OS
- ウインドリバープラットフォーム製品
- EB tresos OSEK
- embOS
- QNX Neutrino
- QNX Momentics
- ThreadX
- ThreadX-μITRON
- eBoss Series
- ELX-ITRON
- PMC T-Kernel
- osCAN/TimingAnalyzer
- NORTi Professional II
- Nucleus OS
- MontaVista Linux 6
- Linux uLinux
- Timesys Linux
- Smalight OS
- TOPPERS-Pro
- TOPPERS-Pro/FMP
- TOPPERS-Pro/PX
- TOPPERS-Pro/HRP2
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact(弊社製品)
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(同上)
弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介
マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact」
μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。
μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。
- 小さいフットプリント
- マイコンの小さなROM/RAMのみで動作するように最適化された最小2.4Kbyteのコンパクトなカーネル。メモリ容量が小さい安価なデバイスを使用する事ができます。
- μC3/Configurator付属
- 選択・設定するだけでベースコードが生成できるコンフィギュレーションツール。開発時間の大幅な短縮や、コーディングミスの減少が可能。RTOSの初心者でも簡単に開発をスタートすることができます。
- 豊富なCPUサポート
- 業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。CPUの選択肢を広げ、機会費用を抑える事ができます。業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。ご使用予定のデバイスで直ぐに開発着手が可能で、ご質問に対して24時間以内の1次回答を徹底しています。
- 省電力対応
- デフォルトで省電力機能がついているため、システム全体の省電力に貢献します。
詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。
高性能リアルタイム処理向けRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard」
μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standardは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOSです。
μC3/Standardは、高性能プロセッサがより高度なリアルタイム制御に耐えられるよう、割込み禁止時間を極力なくし、割込み応答性を最重要課題として設計したRTOSです。
ARM Cortex-Aシリーズ、ARM Cortex-Rシリーズだけでなく、高性能な ARM Cortex-MやRenesas RXシリーズにも対応しています。
- 32/64bitの高性能プロセッサに最適化
- 割り込み応答性を高め、32/64bitの高性能プロセッサ向けに最適化されたμITRON4.0仕様のカーネル。
- 豊富なプロセッサ・サポート
- 業界随一のプロセッササポート実績があり、技術サポートも充実しています。CPUの選択肢を広げ、機会費用を抑える事ができます。業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。ご使用予定のデバイスで直ぐに開発着手が可能で、ご質問に対して24時間以内の1次回答を徹底しています。
- マルチコア対応
- 組込み機器向けに最適なAMP型カーネル。マルチコアによって、リアルタイム性能を強化します。
- 豊富なデバイスドライバを用意
- I2C, SPI, GPIO, SDなどのデバイスドライバをオプションで用意。(UART, Timer, INTCはμC3に、EthernetドライバはμNet3に付属しています。)
詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。
μC3のライセンスの種類・詳細
ライセンスの種類
ライセンスの種類は3つあります。
- 研究開発用プロジェクトライセンス
- 開発量産用プロジェクトライセンス
- プラットフォームライセンス
研究開発用プロジェクトライセンス
研究開発用プロジェクトライセンスは、研究開発のみ可能なライセンスです。ライセンス購入時の段階で、製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めです。
研究開発用プロジェクトライセンスのライセンス費用は、このあとご紹介する開発量産用プロジェクトライセンスの60%の価格です。
有償の保守契約に加入中の場合、開発量産用プロジェクトライセンスのライセンス費用の40%オフの価格でアップグレードが可能です。
開発量産用プロジェクトライセンス
開発量産用プロジェクトライセンスは、研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンスとなります。開発量産用プロジェクトライセンスの対象製品の範囲には、1種類の製品型番だけでなく、その製品ファミリ(派生機種)が含まれます。
有償の保守契約に加入中の場合、プラットフォームライセンスのライセンス費用との差額でアップグレードが可能です。
プラットフォームライセンス
プラットフォームライセンスは、プロジェクトライセンスの対象範囲を広げたライセンスです。プラットフォームライセンスの対象製品は、1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリが範囲となります。サイトライセンスではございません。
※弊社のライセンスはプロジェクトライセンスの形式を採っております。ご購入時に該当プロジェクトの名称をご登録頂く必要があり、その際、「計測機器」などの抽象的な名称ではなく、具体的な名称を頂戴しております。
お客様のご要望をお聞きした上で適切な範囲を設定させて頂きますので、先ずは、担当営業にご相談下さい。
ポイント
- 研究開発用プロジェクトライセンス:製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めなライセンス
- 開発量産用プロジェクトライセンス:研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンス
- プラットフォームライセンス :1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリを範囲とするライセンス
ライセンスの詳細
- ライセンス費用の金額・計算方法:ライセンス購入時の固定の一括払いのみでご使用いただけます
- 開発人数制限 :無(ただし同プロジェクト内)
- 提供形態 :ソースコード
- 使用範囲 :定義されたプロジェクト内
- 使用CPU :型番固定ではなくCPUシリーズ(例:STM32F4シリーズ)
- μC3/ConfiguratorはCPUシリーズ毎に用意されています
ライセンスの価格などの詳細については、下記よりプロダクトガイドをダウンロードしてご覧ください。
保守について
製品定価には契約日の翌月1日から6ヶ月分の無償保守が含まれています。その後、有償で保守を継続することが可能です。
また、年間保守費用は製品定価の40%になります。
無償保守期間終了後、継続して有償保守サービスにご加入いただいた場合は、製品定価の20%になります。(ただし、初年度分の保守とライセンスをセットで購入された場合は、初年度分に限り製品定価の15%になります。)
*研究開発用プロジェクトライセンスの保守費用は開発量産用プロジェクトライセンスの定価の20%になります。
保守サービスには以下が含まれています。
- メールによる技術サポート(1営業日以内に1次回答)
- 製品の無償バージョンアップ
SH-2A CPUシリーズとμC3/Standardの導入事例
- 電源メーカー製 半導体製造装置用高周波電源