スマートファクトリーとは?定義、意味、特徴を簡単に解説

スマートファクトリーとは、IoTの導入により、稼働状況や品質などのデータを管理、自動化した工場のことです。ドイツ政府が提唱する「Industry 4.0」を具現化した形の工場とも言えます。

スマートファクトリーとは「インダストリー4.0」を体現した工場

スマートファクトリーとは、IoTの導入により、稼働状況や品質などのデータを管理、自動化した工場のことです。

IoT(読み方:アイオーティー)

IoTとは、「モノのインターネット」を意味するInternet of Thingsの略。世の中に存在するモノに通信機能を持たせ、相互通信やインターネットへの接続を実現すること。これにより、遠隔操作や自動制御などを実現できる。

また、スマートファクトリーは、ドイツ政府が提唱する「Industry 4.0」を具現化した形の工場とも言えます。

Industry 4.0(読み方:インダストリー4.0)

Industry 4.0とは、ドイツ政府が2011年から提唱している構想。IoTの発展によりあらゆるコストが低下し、新たな経済発展や、それに伴い社会構造に変化がもたらされること。「4.0」とは、第四次産業革命を意味する。

ポイント
  • スマートファクトリーとは、IoTの導入により、稼働状況や品質などのデータを管理、自動化した工場のこと
  • Industry 4.0を具現化した工場とも言える

スマートファクトリーのメリット

スマートファクトリーのメリットとして、以下があります。

  1. 人手不足の解消
  2. 生産性の向上、品質の安定
  3. ノウハウの蓄積、共有

【メリット1】人手不足の解消

スマートファクトリーでは、従来は人の手で行っていた作業を、機械で自動化できます。このため、人手不足を解消できます。

【メリット2】生産性の向上、品質の安定

スマートファクトリーでは、データに基づいた在庫管理や進捗管理、故障感知などをリアルタイムで可視化できます。

これにより、材料投資や設備管理を最適化できるため、生産性の向上や、品質の安定が可能になります。また、顧客の個別のニーズに対応しつつ、高付加価値な製品を生産できます。

【メリット3】ノウハウの蓄積、共有

スマートファクトリーでは、あらゆるデータを収集・分析し、それらを可視化します。具体例としては、熟練の技術者の技能情報などを収集・分析することで、ノウハウを体系化し、共有しやすくなります。

ポイント
  • スマートファクトリーで、人手不足の解消が可能になる
  • スマートファクトリーで、生産性の向上、品質の安定が可能になる
  • スマートファクトリーで、ノウハウを蓄積、共有しやすくなる

スマートファクトリーの企業、具体例

スマートファクトリーの代表的な例として、以下の企業の取り組みが挙げられます。

  • スマート工場実証事業(日立製作所)
  • 食品製造業における重量計算を行うロボットシステム(株式会社コスモジャパン)

スマート工場実証事業(日立製作所)

一つ目のスマートファクトリーの事例は、日立製作所によるスマート工場実証事業です。この事業は、日立製作所が経済産業省から委託を受け、実施されました。

製造業の生産ラインにおいて、アプリケーションごとに必要なデータプロファイルを定めることが効率化の妨げとなっており、IT系と現場でやり取りを行うデータの内容の標準化を目指して実施されました。

この結果、現場データを取得することで、生産ロスやボトルネック工程の見える化が可能になることが検証されました。

出典:平成28年度IoT推進のための社会システム推進事業

食品製造業における重量計算を行うロボットシステム(株式会社コスモジャパン)

二つ目のスマートファクトリーの事例は、食品製造業を行う株式会社コスモジャパンです。

同社は、焼き鳥製品の加工工程において、串刺し機への投入を人間が行っていました。目視により、瞬時の判断で形、重量、方向、順番を決定し、機械へと投入していました。特殊な技術が要求されるため、機械化は困難とされていました。

しかし、ロボットと画像処理機器の導入によってこれらの課題を解決できるようになりました。3次元計測による画像処理で規定重量、形状になるよう測定したり、ロボットで食材を串刺し機へ投入することが可能になりました。

この結果、これまで3名だった人員を1名へと減らすことができました。

出典:ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018

製造業におけるスマートファクトリーの課題

スマートファクトリーの導入が進むことで、製造業の生産効率は向上すると考えられます。しかしその一方で、スマートファクトリー化への取り組みができていない工場もあります。そこには、次のような課題があります。

  1. データの収集にかかるノウハウやコストのハードル
  2. データの分析・活用のハードル
  3. セキュリティリスク

【課題1】データの収集にかかるノウハウやコストのハードル

工場をIoT化する際の初めの課題は、初期のデータ収集環境の構築フェーズにおいて労力やコストがかかる点です。

従来の工場は、データ取得を前提としていません。このため、まずはインターネットへと接続し、データをデータベースに引き渡すための機器・設備を導入しなければなりません。ここには、専門知識や費用が必要になります。

また、それぞれの機器やプロトコルによって取得できるデータの粒度やフォームなどが異なります。これらのデータは、単純に集めるだけでは分析に活用できません。このため、管理システムやAIが活用できるフォーマットでデータを抽出する必要があるのです。

このため、機器や設備などの導入に加えて、どうすれば活用できる状態でデータ抽出ができるかを設計する工程が必要になります。

【課題2】データの分析・活用のハードル

データを取得し、データベースへ蓄積できる環境を整えたとしても、すぐに有意義に活用できるわけではありません。

事前にスマートファクトリー化の目的を決定し、その目的に応じて、データをどのように蓄積し、どのように扱うかを定める必要があります。

また、データからビジネス価値を生み出す仕組みをどのように作るか、という視点も重要になります。

【課題3】セキュリティリスク

IoT化された工場は、データの蓄積や、解析などを進めるため、インターネットへの接続が前提となります。このため、外部からの攻撃による不正アクセスや、マルウェア感染などの可能性があります。これらは、データ改ざんや、攻撃者による遠隔操作などを引き起こすリスクがあります。

従来の工場システムでは、そもそもインターネットへの接続は想定されていなかったため、セキュリティにおける対応策は用意されていません。

また、工場で使われるPCが古い場合は、安定稼働を優先するため、ソフトウェアの更新が避けられることもあります。これらの事情により、工場全体としては、セキュリティに脆弱性を抱えている可能性もあります。

このため、新しく導入するIoT機器だけではなく、連携する制御システムや、データを蓄積するサーバー、それを扱う端末などを含めた、全体のセキュリティシステムを検討する必要があります。

ポイント
  • スマートファクトリーを実現するには、収集にかかるノウハウやコスト、分析や活用が難しい、セキュリティリスクがある、といったハードルが存在する

スマートファクトリー化をすすめる産業用イーサネット

スマートファクトリー化をすすめるにあたり、その事実上の選択肢となっているのが、「産業用イーサネット」です。産業用イーサネットは、工場で使用されるイーサネットのことです。

産業用イーサネットとは

産業用イーサネットとは、イーサネットのうち、産業向けに使用されているもののことです。産業用イーサネットは、工場内のネットワークで使用されています。オフィスなどで使用される標準的なイーサネットよりも、高い堅牢性、リアルタイム性能を備えています。

Ethernet(読み方:イーサネット)とは

Ethernetは、有線LANの通信規格の一つ。イーサネットは、企業のオフィス内ネットワークや家庭内のネットワーク接続に広く用いられている標準規格。

従来の工場システムにおいて、複数の設備機器を連携したいが、異なるメーカーの機器同士での連携が難しい、といった課題がありました。

この課題を解決するために、産業用イーサネットが使われるようになりました。イーサネットは、汎用的な規格であり、広く普及しています。また、従来のフィールドバスと比較すると、高速であり、大量のデータ処理に適しています。

このため、産業用イーサネットは、スマートファクトリー化に最適なネットワークと言えます。

ポイント
  • 産業用イーサネットはスマートファクトリー実現に最適なネットワーク

産業用イーサネットやイーサネットに関する詳細は、以下の記事をご覧ください。

産業用イーサネット(Ethernet)とは?種類・意味・定義を入門者向けにわかりやすく解説

有線LAN規格のイーサネット(Ethernet)とは?種類・意味・定義を入門者向けにわかりやすく解説