組込み機器をIoT化するための勘所とは?既存製品のIoT化事例を紹介(1)

記事のポイント

IoT化を検討する際、要望として「既存製品のIoT化」「クラウド対応」「スマホでの見える化や機器操作」などが挙がります。

この記事では、イー・フォース株式会社で支援した実績を紹介しながら「既存製品をIoT化する際のポイント」をお伝えします。

IoT化の事例紹介

事例1:給湯器リモコン(住宅関連機器メーカー 長府製作所様)

対象製品の操作イメージ

住宅関連機器メーカーの長府製作所様で、対象製品をスマホとスマートスピーカーでどこからでも簡単に操作できるようにした開発事例です。

スマホアプリ(おうち快適アプリ)を使い、サーバーを通じて無線LAN対応タッチパネルリモコンと通信をして、給湯器などの機器を操作できます。これにより、お風呂を沸かすなどの制御をおこないます。

タッチパネルリモコン

既存の製品部分として給湯器を制御するマイコンがあり、そこに新しくネットワークモジュールを追加してWi-Fiを使ってクラウドと通信できるようにしています。今回、既存システムとネットワークを接続するインターフェースにはUARTを利用していますが、UARTでスループットが足りない場合は、SDIOを使うなどして、その他のインターフェースを使用することも可能です。

ネットワークモジュール接続

UART接続のコマンド転送方式では、ネットワークモジュール側にもOSやネットワークプロトコルが載っており、UARTを介して、定義されているコマンドインターフェースを使ってメインCPU側から制御します。

CPUが無いWi-FiモジュールやWi-Fi, Bluetoothの混合モジュールを採用する場合は、モジュールによって指定されたインターフェース(UART, SDIO, USBなど)を使用する必要があります。

プロトコルスタック構成

なお、プロトコルスタック構成は下記です。
プロトコルスタック構成

イー・フォース株式会社のリアルタイムOSであるμC3(マイクロ・シー・キューブ)をベースとし、その上にネットワークスタックであるμNet3が載っています。μNet3にはMQTT、TCP/IP、WLANが入っており、そこに標準組込みではないECHONET Liteのレイヤーを追加しています。ECHONET Liteは複数メーカーの家電機器を接続して遠隔制御やモニタリングができる通信規格です。ECHONET Liteをプロトコルスタック構成に含むことで給湯器を制御しています。

お客様要望の実現

今回のアプリ開発において、お客様から「スマホで操作したい(AndroidとiPhoneの両OSに対応してほしい)」「(しかし)開発費は抑えたい」というご要望がありました。一見両立が難しく思える内容ですが、PWA(Progressive Web Apps)でスマホアプリを開発することで、工数を削減しながらご要望を実現しています。

PWA

PWA( Progressive Web Apps )は、スマホ上でネイティブアプリのように動作するWebサイトです。Web系言語(HTML/CSS/JavaScript)で開発できます。

GPSやカメラなどのリソースへアクセスするAPIも用意されており、Android(Chrome)とiOS(Safari)のどちらでもスマホの機能が利用できます。Webサイトでありながら、アプリストアからインストールするネイティブアプリのように動作します。なお、PWAはアプリストアを使わずにインストールが可能です。

ただし、2022年8月現在ではiOSでBluetoothのデバイスにアクセスできないため、Bluetoothを使用したソリューションには適応が難しい点には注意が必要です。

もしBluetoothを使いたい場合は、モバイルアプリ開発フレームワークを採用するのがよいでしょう。選択肢のひとつに、Apache Cordovaがあります。

Apache Cordova

Apache Cordovaとは、Android/iOS/Windows/Webのアプリが開発できるハイブリッド開発環境です。オープンソースで提供されており、このフレームワークを使用することで、HTML/CSS/JavaScriptで作成したコードを基に各OSのネイティブアプリをビルドできます。また、プラグインを追加することでGPSやカメラなどにもアクセスでき、iOSでもBluetoothなどのリソースが使えるようになります。PWAにはなかった注意点として、Apache Cordovaではネイティブアプリとしてビルドされるため、アプリを正式リリースする際にははアプリストア申請が必要です。

CA証明書の書き換え

FOTA

今回の事例では、無線モジュールのFOTA(Firmware Update Over-The-Air / ファームウェアのアップデート)に対応しています。また、クラウドに接続する為のCA証明書もOTAで書き換えられるようになっています。

各ルーターとの接続性

エンドユーザーの環境では、様々なメーカーのルーターと接続が必要なため、各社のルーターとの接続性も検証しています。そこで、接続性に実績がある開発キットとしてμNet3 WLAN SDKを採用し、接続性を担保しています。また、同時に動作検証の検査工数も削減可能です。

μNet3 WLAN SDK