近年、新たなプログラミング言語「Rust」が注目を集めています。
プログラミング技術に関するナレッジコミュニティのStack Overflowが発表した調査「2022 Developer Survey」では、87%のエンジニアに今後も続けたいと評価され、最も素晴らしい言語として紹介されています。
本記事では、Rustの特長や将来性などについてお伝えしていきます。
Rustとは
Rustは2006年に開発が始まったオープンソースのプログラミング言語です。C/C++の弱点を克服する言語として開発が進み、2015年にバージョン1がリリースされました。
高速性や安全性に優れており、すでにGoogleやMicrosoftなどの世界的大企業では採用を始めています。
今後、WebアプリケーションやOS開発、組込みシステムといった幅広い分野での利用が期待されています。
参考:Google「Google Open Source Blog:Announcing KataOS and Sparrow」
参考:Microsoft「We need a safer systems programming language」
Rustの特長
Rustには、これまで使用されていたプログラミング言語と比べて強みがいくつもあります。主な特長を紹介します。
特長1:安全性
Rustには豊富な種類のシステムと所有権モデルがあり、メモリ安全性が保証されています。
ほかの言語ではメモリ管理について考慮しながら開発を行なう必要があり、C言語やC++言語においては、メモリを手動で管理したり、多重解放によってセキュリティ問題を生じさせてしまうケースがありました。
しかし、Rustには「所有権」というメモリ管理のモデルがあり、所有者が複数になることがないため多重解放は起こりません。
特長2:高パフォーマンス
上述の「所有権」モデルによってガベージコレクタも不要になり、非常に高速でメモリ効率がよいです。
組込み機器で実行したり、他の言語との調和させることも可能で、パフォーマンスを重視するサービスでの実装に適しています。
特長3:並行性
Rustはマルチスレッドに対応しており、複数のプログラムを並行処理できます。
C言語やC++言語で正しく並行処理をさせるためには、データの競合を回避するためのプログラミングや、デッドロック問題への対応が必要でした。
並行処理をさせる際に外部ライブラリを必要とするC言語やC++言語とは違い、Rustでは標準ライブラリにマルチスレッドの機能を有するため、スレッドセーフが保証されています。
特長4:生産性を高める環境
Rustには優れたドキュメントと、不正なデータアクセスをコンパイル時に防止できる仕組みがあります。
また、統合されたパッケージマネージャとビルドツール、多数のエディタに対応するスマートな自動補完と型検査機能、自動フォーマッタといった上質なツールも揃っています。
参考:The Rust Foundation「Rust」
参考:SBテクノロジー株式会社「Rust(プログラミング言語)とは?特徴と活用ステップを解説」
Rustの利用例
世界的大手企業がRustを採用したことで注目されています。下記で例を紹介します。
KataOS
Google社は組込みシステム向けに新たに開発したOS「KataOS」2022年10月に公開しました。
個人情報を収集するスマートデバイスの広がりによりセキュリティ強化を重視し、ほぼすべてをRustプログラミング言語のみで記述すると発表しています。
KataOSは機械学習アプリケーションを実行する組込みハードウェアに特に重点を置いています。Google社はKataOSをリリースし、アンビエント機械学習が人々に信頼されて価値を提供する未来を目指そうとしています。
参考:Google「Google Open Source Blog:Announcing KataOS and Sparrow」
参考:朝日インタラクティブ株式会社「グーグル、Rustで書かれたセキュアなOS「KataOS」を発表」
Dropbox
データセンターの効率性を高めるため、Dropbox社のファイルストレージシステムの複数のコンポーネントがRustで書かれました。その後すべてのDropboxストレージでRustが採用され、世界中のユーザに利用されています。
出展:The Rust Foundation「Rust(Production Highlights)」
Rustの将来性や学習方法
ここまでRustの特長や利用例を紹介しましたが、将来性を予想してみましょう。
将来性
Rustは大手企業が利点に着目して開発に採用している言語で、2023年7月現在では世界中で数百社規模の企業が採用しています。
また、企業スポンサーにはAmazon、Google、Meta、Microsoft、Shopifyなど世界的な名だたる企業が参加しています。
すべてのモノや人がネットワークと繋がるIoTが提唱される世界では、さまざまなデータを安全に扱いながらも、高いパフォーマンスや処理能力が求められます。Rustは安全性と高パフォーマンスを両立する特長があり、今後ますます広がっていくと期待できます。
学習方法
Rustは公式ドキュメントが充実しており、サンプルコード集や練習問題なども用意されています。これらはRustコミュニティサイト「Rustを学ぶ」のページにまとめられています。
また、Microsoft社ではRustを学習するためのトレーニングコンテンツを提供しており、Rust初心者でも手軽に勉強できます。
ほかにも、学習プラットフォームを提供する企業が日本語でRustを学習できるコンテンツの作成をすすめています。今後は日本人向けの学習教材も増え、英語が苦手な人でも学習しやすくなると予想されます。
まとめ
新しいプログラミング言語としてRustを紹介しました。
世界中のプログラマーが注目し、世界的大手企業での採用も広がりはじめていることから、使えると今後非常に役立つ可能性が高い言語です。
興味がある方は、ぜひ学習してみてください。