Bluetooth®の信号を発信する端末「ビーコン(Beacon)」をご存じでしょうか。
この仕組みを使うことでユーザーの位置情報を取得できるため、企業のマーケティングや資産や対象者の見守りに活用されています。
本記事では、ビーコンの特長や活用事例、他の位置情報測定技術との違いをお伝えします。
ビーコンとは?
ビーコンとは?
ビーコンは、無線通信を使って端末固有のID情報を一定間隔で発信し続ける端末です。通信規格にはBluetooth®が使用されるケースが多いです。
ビーコンからサービスや通知を受け取るためには受信用の端末が必要になりますが、スマートフォンにBluetooth®が標準で搭載されているため、機能をオンにするだけで気軽に使うことができます。
ビーコン活用の流れ
ビーコンは発信に特化しており、下記の流れで機能します。
- (情報を発信したい企業などが)ビーコンを設置する
- 通信範囲内入ったユーザーの受信端末(スマートフォン)がビーコンの情報を検知する
- 検知した情報がサーバーに送られ、ユーザーの位置に基づいた情報が提供される
ビーコンの特長
ビーコンには複数の特長があります。
特長1:複数同時利用が可能
ビーコンの受信端末は、同時に複数のビーコンを受信した場合でも、パケットに含まれるIDによってビーコンを識別することができます。
そのため複数のビーコンを同時に受信することができます。
特長2:地下にも設置できる
ビーコンは信号が届く範囲であれば地下でも利用できます。小型で軽量なものが多く、持ち運びや設置がしやすい特長もあります。
特長3:省電力
ビーコンは端末が小型で電池の持ちがよく、長時間の連続使用が可能です。
また、Bluetooth® 4.0で新規に追加された通信規格のBLEには省電力の特長があり、BLEを採用すればより電力とコストを抑えて運用できます。
Bluetooth®やBLEについて詳しく知りたい方は、こちらの記事「Bluetooth®とBLEとは?概要や違い、特長を解説」もご覧ください。
ビーコンと他の技術との違い
ビーコン以外にも、位置情報を測定するための技術があります。
GPS
位置測定を行なう通信技術には、ビーコン以外にもマップアプリなどで使用されるGPSが有名です。GPSもBluetooth®と同様に、スマートフォンに基本的機能として搭載されています。
GPSは人工衛星を利用して位置を把握する仕組みで、ビーコンよりも広範囲で利用することができます。
ただし、発信源である人工衛星からの電波が届かない場所(屋内や地下など)では利用できません。また、通信状況によって精度が左右されてしまうため、情報を表示する際に誤差が起きやすい点に注意が必要です。
そのため、エリア内で細かくユーザーの位置を把握したい場合などでは、ビーコンのほうが適しています。
Wi-Fi
Wi-FiもBluetooth®やGPSと同じく、スマートフォンの基本通信機能として搭載されています。
Wi-Fiを使用しているスマートフォンのアクセスポイントを特定することで、位置情報の取得や、その位置情報に基づいた情報発信が可能です。
精度の高さはビーコン(Bluetooth®)>Wi-Fi>GPSの順になりますが、Wi-Fi環境がない屋外では通信ができず、アクセスポイントも把握しにくいという留意点があります。
参考:株式会社トランスメディアGP「ビーコンを使った位置情報マーケティング。最新技術とその内容まで詳しく解説」
留意点
ビーコンの導入を検討する際の留意点も紹介します。
受信側もBluetooth®機能をオンにしている必要がある
ビーコンを利用する場合、発信側端末と受信側端末(スマートフォン)の両方でBluetooth®機能をオンにしている必要があります。
Bluetooth®機能を常時オンにしていないユーザーに施策を打つのは難易度が高くなります。
顧客に合わせた情報の出し分け
ビーコン側には受信機能がないため、従来は検知範囲内のユーザーに対して属性や嗜好を考慮していない情報を送ってしまい、嫌悪感を持たれることがありました。
今後は、あらかじめアプリに登録されている興味関心に関するデータを基に提供する情報を出し分けるといった対応も求められます。なお、その際には個人情報の扱いやプライバシーについても考慮して仕組みを設計する必要があります。
参考:発注ナビ株式会社「ビーコンとは?身近にある活用例と新たな集客サービスへの活かし方」
参考:株式会社インプレス「ハンガーやビーコンで顧客の行動をデータ化、「実店舗でもECと同様のパーソナライズ体験」に挑むTSIの取り組み」
活用事例
実際にビーコンがどのように活用されているのか、事例を紹介します。
店舗や施設内でのマーケティング
ビーコンを店舗に設置して、来店したユーザーにアプリを通じてクーポンや商品情報を配信することができます。
また、大規模施設内に複数のビーコンを設置すれば、広範囲での人の流れを把握することも可能です。
このように、店舗や施設における集客や販促に利用されています。
見守りサービス
地域の施設などに受信スポットを設置し、子どもや高齢者などの対象者にビーコンを持ってもらうことで、保護者が対象者の行動や位置情報を見守ることができます。
専用アプリを入れたスマートフォンでも受信スポットになることができ、それぞれの受信スポットが見守り用のビーコンからの電波を受信した位置を記録して保護者などに通知します。
まとめ
以上、ビーコンの特長や活用事例を紹介しました。
Bluetooth® SIGによると、2023年現在から2027年までの今後5年にわたってBluetooth®対応デバイス出荷数が大きく成長すると予測されています。
今後、Bluetooth®機能を日常的に利用する人が増え、位置情報以外のユーザー情報に応じたコミュニケーションができるようになってくると、新たなビーコン活用事例も増えてくると思われます。
引き続き、注目していきましょう。
出典(Bluetooth®対応デバイス出荷数):Bluetooth® SIG「2023年 Bluetooth®市場動向」