SoC(読み方:エスオーシー)とは、異なる機能を持つ複数のLSIを一つの集積回路に集約したものを指します。全体として一つのシステムとして機能するよう設計されているため、「システムオンチップ」を略し、「SoC」と呼ばれます。SoCは、その特徴から、システムLSIの一種と考えることができます。
LSI(読み方:エルエスアイ)とは
LSIとは、素子数が多い集積回路のこと。「大規模な集積回路」を意味する「Large Scale Integrated circuit」の略。LSIは、素子数が1000個以上のものを指すが、明確な基準はない。
SoC・システムLSIとは
SoCとは、 システムに必要な複数の異なる機能を一つのチップ(シリコンダイ)に集約したものです。
システムLSIとは、機能や種類の異なるICを1個のLSIに集積したものです。SoCとシステムLSIは、ほぼ同じ意味で使用されていますが、厳密にはそれぞれ定義が異なります。
システムLSIには、SoCと、複数のチップを実装基板上に搭載するSiPがあります。つまり、システムLSIは、ワンチップのもの(SoC)とそうでないもの(SiP)があり、必ずしもワンチップとは限りません。
SiP(システム・イン・パッケージ)とは
SiPとは、複数のLSIやICを1つのパッケージに集積したもの。全体で一つのシステムとして機能するよう設計されている。
かつての半導体業界では、複数のチップをつなぎ、一つのボードでシステムを構成していました。SoC・システムLSIの登場によって、1つのLSI(さらには1つのチップ)で1つのシステムを実現できるようになりました。
SoC・システムLSIが可能になった背景には、製造技術や設計技術の進歩があります。それらの進歩により、一つの集積回路に搭載できる素子数が増大しました。その結果、SoC・システムLSIの実現が可能になったのです。
SoC・システムLSIとワンチップマイコンの違い
複数の機能をワンチップ上に搭載している集積回路として、ワンチップマイコンがあります。
ワンチップマイコンとは
ワンチップマイコンとは、一つの集積回路の中に、CPUやメモリ、入力装置などを搭載したもの。「マイコン」とも呼ばれる。
SoC・システムLSIとワンチップマイコンは、どちらも「動作に必要な機能がワンチップに収まっている」という共通点があります。
また、両者には違いがあるものの、厳密な違いは、必ずしも明らかではありません。
一般的に、ワンチップマイコンは 、処理能力や機能に制限があるものとされています。このため、ワンチップマイコンは、SoCの中でも、回路規模が小さなものと考えることができます。
なお、慣例的に、 ARM社のCortex-M(r)を代表とするMCU(Micro Controller Unit) は、マイコンと呼ばれることが多いです。
他方で、SoCは様々な文脈で使用されます。
ワンチップマイコンとSoCの共通点と違い(一例)
- 共通点:動作に必要な機能がワンチップに収まっている
- 違い :サイズ(比較的回路規模が小さなもの=ワンチップマイコン、それ以外=SoC)
(※あくまで、ひとつの考え方)
SoC・システムLSIのメリット・デメリット
SoC・システムLSIのメリット
SoC・システムLSIには、ボード(基板)を使用する場合に比べて、下記のメリットがあります。
SoC・システムLSIのメリット(※ボード(基板)を使用する場合との比較)
- 小型
- 製造コストが低い
- 処理が高速
- 消費電力が節約できる
SoC・システムLSIによる小型化
SoC・システムLSIは、1つの集積回路でシステムを完結させています。このためSoC・システムLSIは、ボード・(基板)上で複数の集積回路を搭載するよりも、小型化が可能になります。
以上の点から、SoC・システムLSIは、スマートフォンやデジタルカメラなど、軽量・小型が求められる製品に適しています。
SoC・システムLSIによる製造コスト低減
SoCは、ボード(基板)上で複数の集積回路を搭載するよりも、小型化が可能になります。その分ダイサイズも小さくなるため、製造コストを低減できます。
ダイサイズとは
ダイサイズとは、一つのICチップの面積のこと。ダイサイズの「ダイ」とは、シリコンダイのことで、一枚一枚のチップを指す。
SoC・システムLSI処理の高速化
従来は、ボード(基板)上の集積回路に外部端子を接続して、信号を送信していました。この外部端子を接続する領域を、「ICパッド」と言います。ICパッドを経由した通信は、集積回路の内部での通信に比べ、処理に時間がかかります。
ICパッドとは
ICパッドとは、集積回路の外部端子を接続するための領域、電極のこと。
SoC・システムLSIでは、外部端子を接続せず、内部バスで通信できるため、遅延が少なくなります。このため、処理の高速化を実現できます。
SoC・システムLSIによる消費電力の節約
既に述べた通り、従来は、ボード(基板)上の集積回路にICパッドを用いていました。このICパッドは、内部の通信よりも多くの電力を出力する必要があります。このため、ICパッドを必要としないSoC・システムLSIは、消費電力を低減できます。
ポイント
- SoC・システムLSIは、1つの集積回路でシステムを完結しているため小型化が可能
- SoC・システムLSIは、ダイサイズが小さくなるため、製造コストを低減できる
- SoC・システムLSIでは、外部端子を接続せず、内部バスで通信できるため、処理を高速化できる
- SoC・システムLSIは、ICパッドを必要としないため消費電力を低減できる
SoC・システムLSIのデメリット
上記でSoC・システムLSIのメリットを述べましたが、メリットだけではなく、もちろんデメリットもあります。
SoC・システムLSIのデメリット
- 搭載できる機能やテクノロジーに限界がある
SoC・システムLSIは、異なる機能やテクノロジーを同時に搭載することに限界があります。例えば、高電圧の回路と低電圧の回路を集積することには、技術的に困難です。その場合、開発期間の長期化や、設計の失敗などのリスクを伴います。
このため、これらの異なる機能やテクノロジーをワンチップに収めることが技術的に困難な場合は、複数の集積回路に異なる機能やテクノロジーを分けると、搭載は簡単になります。
ポイント
- SoC・システムLSIは、搭載できる機能やテクノロジーに限界がある
- 複数の集積回路に異なる機能やテクノロジーを分けると、搭載は簡単になる
SoC・システムLSIの構成要素・例
SoC・システムLSIの主な構成要素は、下記の通りです。
- CPU
- メモリ
- バスインターフェース
- I/Oインターフェース
- アプリケーション専用回路
SoC・システムLSIのCPU
SoC・システムLSIは、通常のマイコンと同様、CPUを搭載しています。CPUは、中央演算処理やデータ処理、制御などの機能を持ちます。
SoC・システムLSIのメモリ
SoC・システムLSIのメモリには、ROMやRAMがあります。通常のマイコンと同様、ROMにはプログラムやデータなどのソフトウェアを記憶し、RAMにはデータを記憶します。
SoC・システムLSIのバスインターフェース
SoC・システムLSIのメモリは、バスを通じて外部メモリや外部装置との間でデータを転送します。
SoC・システムLSIのI/Oインターフェース
SoC・システムLSIのI/Oインターフェースは、SoCと外部装置との間で制御信号やデータ信号を入出力します。
SoC・システムLSIのアプリケーション専用回路
SoC・システムLSIのアプリケーション専用回路は、組込みシステムの機能の一部をハードウェアとして実現します。
下記の図は、SoCの構成例です。
主なSoC・システムLSIメーカー
主なSoC・システムLSIメーカーは、下記の通りです。
- NXPジャパン
- Marvell
- マキシム・インテグレーテッド
- サイプレス セミコンダクタ
- テキサス・インスツルメンツ
- Nuvoton Technology
- QBit Semiconductor
- Allwinner Technology
- Tensilica
- ARM
サイプレス セミコンダクタの提供するSoCである「PSoC」シリーズについては、下記の記事をご覧ください。