日本発の産業用オープンフィールドネットワークであるCC-Linkは、製造現場の制御と情報を高速かつ安定的に扱える通信システムです。CC-Linkにイーサネットの技術を取り込んだCC-Link IEなど、さまざまなバリエーションが展開されています。アジア市場での普及率が特に高く、独自の安全機能や既存資産の活用のしやすさが強みです。本記事ではCC-linkの特徴について解説し、ほかの産業イーサネットとの違いについてもまとめます。
CC-Linkとは?
CC-Linkは、1996年に三菱電機が開発した日本発の産業用オープンフィールドネットワークです。製造現場の制御と情報を同時に扱える高速通信システムとして、世界標準の地位を確立しています。最大10Mbpsの通信速度と最大1.2kmの長距離伝送を実現し、1つのネットワークで最大64台のデバイスを接続可能です。マルチベンダー対応や省配線、高い信頼性など、多くの特徴を持つ革新的な通信規格です。
CC-Linkの主な特徴
ここではCC-Linkの主な特徴について解説します。
高速かつ長距離伝送可能で、大規模ネットワークにも対応
CC-Linkの特徴のひとつは、最大10Mbpsの通信速度です。高速かつ安定した入出力応答が実現されるため、製造現場での制御と情報のリアルタイム処理が可能となり、生産効率の向上とタクトタイムの短縮に貢献します。
また、最大1.2kmまでの長距離伝送が可能なのも特徴のひとつです。工場や生産ラインが広範囲にわたる場合でも、1つのネットワークで効率的に制御と情報管理が行えます。さらに、1つのネットワークで最大64台のデバイスを接続できるため、大規模ネットワークにも対応しています。
マルチベンダー対応と省配線で柔軟な環境構築可能
標準化されたプロファイルを採用したCC-Linkは、異なるメーカーの機器を容易に統合できるマルチベンダー対応を実現しています。これにより、ユーザーは最適な機器を自由に選択し、柔軟なシステム構築が可能です。
また、従来の複雑な制御線を単一のネットワークケーブルに置き換えることができます。大幅な省配線が実現できるため、配線工事の簡素化、コスト削減、保守性の向上に役立ちます。
RAS機能を備えた高い信頼性
CC-LinkはRAS(Reliability, Availability, Serviceability)機能を備えており、信頼性の高い通信が実現可能です。通信エラーの検出や自動復旧機能、ループバック機能などにより、システムの安定稼働が確保されます。さらにCC-Link Safetyを用いれば、安全性を重視した通信プロトコルが採用され、さらなる信頼性向上も期待できます。
CC-Linkのバリエーション
ここではCC-Linkのバリエーションについて、代表的な3種類についてまとめます。
送受信データ量が最大8倍に拡張された「CC-Link Ver.2.0」
CC-Link Ver.2.0は、従来のVer.1.0と比較して一台あたりの送受信データ量を最大8倍に拡張した規格です。これにより、半導体製造工程のIn-SituモニタやAPC(Advanced Process Control)、多チャンネルのアナログ/デジタル変換データの送受信など、大容量データ通信が必要な用途に対応できます。
安全通信機能を追加した「CC-Link Safety」
CC-Link Safetyは、CC-Linkに安全通信機能を追加したバリエーションです。既存のCC-Link専用ケーブルやリモート局をそのまま活用しながら、安全なシステムを構築できます。これにより、高速通信性能を維持しつつ、安全関連の信号を効率的に伝送することが可能となるため、生産現場の安全性と生産性の向上を同時に実現します。
1Gbpsの高速通信を実現した「CC-Link IE」
CC-Link IEは、1Gbpsの高速通信を実現した産業用イーサネットです。Ethernet標準の機材が活用できるため、ネットワーク構築のコストの削減が期待できます。共有メモリ方式とトークンパッシング方式を採用し、簡単な制御と高い信頼性を実現。最新の規格「CC-Link IE TSN」では、通信方式を従来のトークンパッシング方式から時分割方式にしたことで、ネットワーク全体のデータ更新時間を短縮し、リアルタイム性の高いデータを扱えるようになりました。
他の産業用イーサネットとの違い
ここでは、CC-Link IEの最新の規格「CC-Link IE TSN」とほかの産業イーサネットとの違いについてまとめます。
通信速度 | 通信距離 | 最大接続台数 | |
CC-Link IE TSN | 1Gbps/100Mbps | 最長550m | 64,770台 |
FL-net | 10/100Mbps | ~100m | 254台 |
EtherNet/IP | 10/100Mbps | ~100m(ノード間) | 制限なし |
PROFINET | 100Mbps | ~100m | 制限なし |
EtherCAT | 全二重100Mbps | ~100m(ノード間) | 65,535台 |
CC-Link IE TSNについては、下記の記事をご覧ください
産業用イーサネットについてさらに詳しく知りたい人は、下記の記事をご覧ください。
まとめ
本記事ではCC-Linkとはなにか、特徴やバリエーションについて解説しました。またCC-Link IEの最新規格「CC-Link IE TSN」と、ほかの産業用イーサネットとの違いについてもまとめました。
CC-Linkは、製造現場の効率化と高度化に大きく貢献している産業用オープンフィールドネットワークです。
製造現場にIoTやAIなどの先端技術が導入されていくのに伴い、CC-Linkは高速・高信頼性の産業用ネットワークを作るために、ますます活用されていくことでしょう。