IoTの世界に革命を起こす通信技術、それがLoRaWANです。読者の中には、LoRaWANという名前は耳にしたことがあるものの、詳しく知らない方もいるのではないでしょうか?
そこで本記事では、LoRaWANの概要やメリット、LoRaとの違いまで、わかりやすく解説します。IoTの未来を切り開く、革新的な技術の全貌をぜひご覧ください。
LoRaWANとは
LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)は、IoTデバイスの長距離通信を可能にする革新的な無線ネットワーク規格です。低消費電力と広域をカバーするのが特徴で、ライセンス不要の920MHz帯を使用します。
LoRa Allianceが策定し、2021年に国際標準となったLoRaWANは、多数のIoTデバイスを少数のゲートウェイで効率的に接続できます。キャリアの通信網に依存せず、独自のネットワーク構築が可能なため、様々な規模や用途に柔軟に対応することが可能です。
省電力性と長距離通信能力を兼ね備えたLoRaWANは、スマートシティや農業、工場監視など、幅広いIoTアプリケーションで急速に普及しています。
LoRaWANはLPWAの一種
LoRaWANは、LPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる低消費電力広域通信技術の一種です。LPWA規格は他にもNB-IoTやSigfoxなどがあります。
LoRaWAN | NB-IoT | Sigfox | |
電波の免許 | 不要 | 必要 | 不要 |
通信速度の目安 | 250bps | 100kbps | 100bps |
最大通信距離の目安 | 10km | 40km | 50km |
LoRaWANは、免許不要の周波数帯を使用するため、独自のネットワーク構築が容易です。また、双方向通信が可能で、セキュリティ機能も備えています。通信速度は他の技術より遅いものの、センサーデータの送信など小容量データの長距離伝送に最適です。
LPWAについて詳しく知りたい方は、以下の記事も読んでみてください。
関連記事:LPWAとは?特長や他通信規格との比較、活用事例を紹介
LoRaWANとLoRaの違い
LoRaとLoRaWANは、しばしば混同されますが、それぞれ異なる役割を持っています。LoRaはアメリカのセムテック社が開発した無線通信における変調方式の一つで、IoT 接続を提供する長距離無線通信テクノロジーのことです。少ない電力で遠距離通信を可能にする特殊な電波の送り方を使用し、IoTデバイスの基本的な通信手段として利用されています。
一方、LoRaWANは、LoRa技術を利用したネットワークプロトコルです。LoRaの長距離通信能力を活かしつつ、デバイス管理、セキュリティ、双方向通信などの機能を追加しています。
簡単に言えば、LoRaが「どのように信号を送るか」を定義するのに対し、LoRaWANは「その信号をどのように管理し、ネットワーク化するか」を規定しているのです。この組み合わせにより、効率的で信頼性の高いIoTネットワークの構築が可能になっています。
LoRaWANの主な用途
LoRaWANは、多様な分野でIoTを実現する重要な通信技術として注目されています。
主な用途は以下の通りです。
- 製造業のIoT化
- スマート農業
- 物流や人の位置情報トラッキング
- 環境センシング
- スマートシティをはじめとする生活インフラの最適化
ビジネスの効率化や新規サービスの立案、社会課題の解決など、幅広い分野で活用が進んでいます。
LoRaWANを活用するメリット
LoRaWANを活用するメリットは以下の3つです。
- 省電力で利用できる
- 長距離通信に対応している
- ノイズ耐性がある
順番に解説します。
省電力で利用できる
LoRaWANの最大の特長の1つは、優れた省電力性能です。従来の4Gや5G回線、Wi-Fiと比べ、圧倒的に低い消費電力で動作します。ボタン電池1個で双方向通信可能なセンサーも。
この特性により、デバイスの電池寿命が大幅に延長され、頻繁な充電やバッテリー交換が不要になります。結果として、メンテナンス作業の軽減とコスト削減につながります。また、低消費電力によりセンサーの小型化も可能となり、設置や運用に労力がかかりません。
長距離通信に対応している
優れた長距離通信能力もLoRaWANを活用するメリットと言えるでしょう。群馬大学理工学部と太田市による実証実験では、LoRaWANのゲートウェイ(基地局)が半径10kmをカバーし、5Gアンテナの100倍の範囲で通信を可能にしています。
この能力により、広大な農地や都市全体をカバーする大規模IoTネットワークの構築ができるようになります。また、遠隔地のモニタリングや、通信インフラ整備が困難だった地域でのIoT導入も容易になるでしょう。
参照:国立大学法人 群馬大学 理工学部・大学院理工学府「【太田市との実証実験】LoRaWAN超低電力広域ネットワークを活用した熱中症対策について」
ノイズ耐性がある
優れたノイズ耐性もLoRaWANを活用するメリットです。使用する920MHz帯は、他の無線ネットワークが存在する環境下でも安定した通信を実現できます。これは、Wi-Fiなどが使用する2.4GHz帯と比べて大きな利点です。2.4GHz帯では、デバイスが密集すると通信干渉が起こり、接続が不安定になることがあります。
一方、LoRaWANは電波干渉の影響を受けにくく、工場内など無線設備が多い環境でも安定運用が可能です。
まとめ|LoRaWANについて解説しました
LoRaWANは、低消費電力で長距離通信が可能な無線ネットワーク規格で、スマートシティや農業、工場監視など幅広い分野で活用されています。
主なメリットは省電力性、長距離通信能力、ノイズ耐性の3つです。
LoRaWANは、効率的で信頼性の高いIoTネットワークの構築を可能にし、IoT技術の未来を切り開く重要な役割を果たすことが期待されています。