LPC4300シリーズとは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

LPC4300シリーズは、NXPセミコンダクターズ(以下NXP社)の高性能マイクロコントローラです。LPC4300シリーズは、Arm Cortex-M4/M0を搭載し、デュアルコアアーキテクチャの高性能と柔軟性を担保しています。

LPC4300の仕様

最大動作周波数(MHz) フラッシュメモリ(最大)(kB) EEPROM(kB) CAN GPIO(最大) 電圧源(最小~最大)(V)
LPC431x 204 1024 16 2 83 2.2 to 3.6
LPC432x 204 1024 16 2 83 2.2 to 3.6
LPC433x 204 1024 16 2 164 2.2 to 3.6
LPC435x 204 1024 16 2 164 2.2 to 3.6
LPC437x 204 2 164 2.2 to 3.6
LPC43Sxx 204 1024 16 2 164 2.2 to 3.6

出典:LPC4300 Series

LPC4300とは

LPCシリーズとは

LPCシリーズは、NXP社が提供しているマイコンのシリーズです。それぞれの特長は以下です。

シリーズ CPU メモリ 特長 アプリケーション例
LPC800 Arm® Cortex® -M0+
Up to 30 MHz
16-64 kB Flash
1-16 kB RAM
エントリーレベル センサーゲートウェイ
LPC1100 Arm® Cortex®-M0/M0+
50 MHz
4-256 kB Flash
1-36 kB RAM
接続性 ゲーミング周辺機器
LPC51U68 Arm® Cortex®-M0+
100MHz
256 KB flash
Up to 96 KB total SRAM
高パフォーマンス、電力効率 高機能ゲーミングキーボード
LPC54000 Arm® Cortex®-M4
100 MHz、180 MHz、220 MHz
デュアルコアオプションあり
128-512 kB Flash
Up to 200 kB RAM
主流シリーズ スマートホーム、ビルオートメーション
LPC1200 Arm® Cortex®-M0
50 MHz
32-128 kB Flash
4-8 kB RAM
ノイズ耐性 白物家電
LPC1300 Arm® Cortex®-M3
72 MHz
8-64 kB Flash
4-12 kB RAM
エントリーレベルのアップグレード 一般消費周辺機器
LPC1500 Arm® Cortex®-M3
72 MHz
64-256 kB Flash
12-36 kB RAM
モーションコントロール モーター制御
LPC1700 Arm® Cortex®-M3
Up to 120 MHz
32-512 kB Flash
8-96 kB RAM
拡張性、主力シリーズ スマートエナジー
LPC1800 Arm® Cortex®-M3
180 MHz
Up to 1024 kB Flash
104-200 kB RAM
Flashなしオプションあり
高パフォーマンス、統合性 セキュアゲートウェイ
LPC4000 Arm® Cortex®-M4
120 MHz
64-512 kB Flash
24-96 kB RAM
拡張性、主力シリーズ 医療機器
LPC4300 Cortex-M4
204 MHz
マルチコアオプションあり
Up to 1024 kB Flash 104-282 kB RAM
Flashなしオプションあり
高パフォーマンス、統合性 高性能オーディオ

出典:NXP「NXP® LPC Microcontrollers Q」

LPC4300の特徴

LPC4300シリーズMCUは、非対称デュアルコアアーキテクチャの高性能と柔軟性を、複数の高速接続オプション、高度なタイマー、アナログ、およびオプションのセキュリティ機能と組み合わせて、コードとデータ通信を保護します。DSP機能により、すべてのLPC43xxファミリは、データ集約型アプリケーションで複雑なアルゴリズムをサポートできます。フラッシュおよびフラッシュレスオプションは、大規模で柔軟な内部および外部メモリ構成をサポートします。

原文は、以下の通りです。

LPC4300 Series MCUs combine the high performance and flexibility of an asymmetric dual-core architecture with multiple high-speed connectivity options, advanced timers, analog, and optional security features to secure code and data communications. DSP capabilities enable all LPC43xx families to support complex algorithms in a data-intensive application. Flash and Flashless options support large, flexible internal and external memory configurations.

出典:LPC4300 Series

LPC4300シリーズは、デュアルコアによる高い性能と柔軟性を兼ね備えたマイコンです。デュアルコアとは、マルチコアの種類の一つであり、コアを2つ搭載したマルチコアのことを指します。

マルチコアとは

マルチコアとは、1つのCPUの中に複数のCPUコアを内蔵する技術のこと。マルチコアのプロセッサは、複数の処理を並列しておこなうことで、シングルコアに比べ高い処理能力を実現している。マルチコアによって高機能化されたプロセッサは、「マルチコアプロセッサ」と呼ばれる。

組み込みにおけるマルチコア、マルチコアプロセッサとは?種類・定義・特徴をわかりやすく解説

LPC4300は、Cortex-M4、M0の2つの異なるコアを搭載しています。LPC4300は、コアごとに機能を分けることで、処理を効率化しています。

それぞれのコアの機能は、下記の通りです。

Cortex-M0:ペリフェラルコントロール等のリアルタイム処理
Cortex-M4:デジタル信号処理

またLPC4300は、DSP機能を搭載しています。

DSP(デジタルシグナルプロセッサ・Digital Signal Processor)とは

DSPとは、積和演算の高速な処理に特化したプロセッサのことです。主にオーディオや画像の信号処理や、モータの制御、計測、遠隔通信などの処理において使用されています。

半導体のDSP(デジタルシグナルプロセッサ)とは?

LPC4300は、LPC1800とペリフェラルとピンに互換性があります。このためLPC4300は、コアをCortex-M3からCortex-M4に変更しても、既存のソフトウェア資産を活かした開発が可能です。

LPC1800については、以下の記事をご覧ください。

LPC1800シリーズとは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

LPC4300のデータシートは、下記をご覧ください。

LPC4300のデータシート

ポイント
  • LPC4300は、デュアルコアによって高い性能と柔軟性を兼ね備えている
  • LPC4300は、コアごとに機能を分けることで、処理を効率化している
  • LPC4300は、LPC1800とペリフェラルとピンに互換性がある
  • LPC4300は、コアをCortex-M3からCortex-M4に変更しても、既存のソフトウェア資産を活かした開発が可能

LPC4300の高速・高機能ペリフェラル(周辺機器)

LPC4300は、下記のペリフェラル(周辺機器)を搭載しています。

  1. ハイスピードUSB x 2
  2. Ethernet
  3. LCDコントローラ 1024×768
  4. SD2.0/SDIO2.0/MMC4.3/CE-ATA
  5. SDRAMをサポートする外部メモリコントローラ
  6. SPIフラッシュ・インターフェース (SPIFI)
  7. モーターコントロールPWM
  8. AES復号エンジン+ OTP暗号キー
  9. ステート・コンフィギュラブル・タイマ(SCT)
  10. シリアルGPIO (SGPIO)

出典:LPC4300/LPC1800

LPC4300の製品ラインアップ

  • LPC431x:シリアル接続、高度なタイマー、CAN 2.0を含むアナログおよび高速接続の範囲。
  • LPC432x:シリアル接続、高度なタイマー、Hi-Speed USB、CAN 2.0などのアナログおよび高速接続の範囲。
  • LPC433x:シリアル接続の範囲、高度なタイマー、Hi-Speed USB、CAN 2.0、10 / 100イーサネットなどのアナログおよび高速接続。
  • LPC435x:シリアル接続の範囲、高度なタイマー、Hi-Speed USB、CAN 2.0、10 / 100イーサネット、グラフィックLCDコントローラーなどのアナログおよび高速接続。
  • LPC437x:シリアル接続の範囲、高度なタイマー、高速アナログ(80 Msps ADC)、Hi-Speed USB、CAN 2.0、10 / 100イーサネット、グラフィックLCDコントローラーなどの高速接続。
  • LPC43Sxx:AES暗号化、OTPキーストレージ、真の乱数生成などのコードおよびデータ保護のためのセキュリティ機能と組み合わされた、高速接続、タイミング、アナログ機能の全範囲。

原文は、以下の通りです。

LPC431x: Range of serial connectivity, advanced timers, analog and high-speed connectivity including CAN 2.0.
LPC432x: Range of serial connectivity, advanced timers, analog and high-speed connectivity including Hi-Speed USB, CAN 2.0.
LPC433x: Range of serial connectivity, advanced timers, analog and high-speed connectivity including Hi-Speed USB, CAN 2.0, 10/100 Ethernet.
LPC435x: Range of serial connectivity, advanced timers, analog and high-speed connectivity including Hi-Speed USB, CAN 2.0, 10/100 Ethernet, and graphic LCD controller.
LPC437x: Range of serial connectivity, advanced timers, high-speed analog (80 Msps ADC), and high-speed connectivity including Hi-Speed USB, CAN 2.0, 10/100 Ethernet, and graphic LCD controller.
LPC43Sxx: Full range of high-speed connectivity, timing and analog features combined with security features for code and data protection, including AES encryption, OTP key storage, and true random number generation.

出典:LPC4300 Series

LPC4300シリーズの入手方法

LPC4300シリーズのマイコンは、NXP社や、NXP社の正規販売店で購入できます。

LPC4300の開発環境

LPC4300に対応した代表的な開発環境は、以下の通りです。

  • LPCXpresso IDE
  • Arm Keil MDK
  • IAR Embedded Workbench for ARM

LPC4300評価ボード

LPC4300の評価ボードは、以下の通りです。

  • Keil MCB4300
  • Embedded Artists LPC4088 / 4357
  • LPCXpresso 43XX
搭載マイコン 対象 データシート
Keil MCB4300 LPC4350、MCB4357 マイコン初心者 Keil MCB4300のデータシート
Embedded Artists LPC4088 / 4357 LPC4088、LPC4357 直ぐに試作開発したい Embedded Artists LPC4088のデータシート

Embedded Artists LPC4357のデータシート

LPCXpresso 43XX LPC4367、LPC43S67 Arduinoを使って評価したい LPCXpresso 43XXのデータシート

Keil MCB4300

Keil MCB4300は、arm KEILが提供する評価ボード・スターターキットです。Keil MCB4300を使用すると、作業プログラムを作成およびテストできます。

Keil MCB4300は、MDK-ARM評価ツールが含まれています。プログラムの作成や、機能の評価に使用できます。このため、初心者でも簡単に評価が可能です。

Embedded Artists LPC4088 / 4357

Embedded Artists LPC4088 / 4357は、様々な試作開発に特化した評価ボードです。Embedded Artists LPC4088 / 4357は、直ぐに試作開発が可能です。

LPCXpresso 43XX

LPCXpresso 43XXは、NXP社純正の低コストな評価ボードです。LPCXpresso 43XXには、Arduino UNO R3に基づく拡張オプションがあります。

Arduino(読み方:アルデュイーノ)

Arduinoは、電子工作用プラットフォーム。初心者にも扱いやすいのが特徴。

このためLPCXpresso 43XXは、初心者でも評価が可能になります。

LPC4300の対応OS

LPC4300に対応しているOSは、以下の通りです。

  • ThreadX
  • FreeRTOS
  • embOS
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact(弊社製品)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact」

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。

μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。

小さいフットプリント
マイコンの小さなROM/RAMのみで動作するように最適化された最小2.4Kbyteのコンパクトなカーネル。メモリ容量が小さい安価なデバイスを使用する事ができます。
μC3/Configurator付属
選択・設定するだけでベースコードが生成できるコンフィギュレーションツール。開発時間の大幅な短縮や、コーディングミスの減少が可能。RTOSの初心者でも簡単に開発をスタートすることができます。
豊富なCPUサポート
業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。CPUの選択肢を広げ、機会費用を抑える事ができます。業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。ご使用予定のデバイスで直ぐに開発着手が可能で、ご質問に対して24時間以内の1次回答を徹底しています。
省電力対応
デフォルトで省電力機能がついているため、システム全体の省電力に貢献します。

詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。

資料ダウンロード(無料)

LPC4300 マルチコアサポート

μC3/CompactのNXP LPC4300拡張バージョンでは、ARM Cortex-M4コアとARM Cortex-M0コア双方にカーネルを実装し、他プロセッサ上のタスクへタスク間通信を実現できます。μNet3/CompactをARM Cortex-M0コアに実装することで、TCP/IPオフローディングの機能を実現し、ARM Cortex-M4コア側のCPU負荷を軽減することができます。

μC3のライセンスの種類・詳細

ライセンスの種類

ライセンスの種類は3つあります。

  • 研究開発用プロジェクトライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス
  • プラットフォームライセンス

研究開発用プロジェクトライセンス

研究開発用プロジェクトライセンスは、研究開発のみ可能なライセンスです。ライセンス購入時の段階で、製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めです。

研究開発用プロジェクトライセンスのライセンス費用は、このあとご紹介する開発量産用プロジェクトライセンスの60%の価格です。

有償の保守契約に加入中の場合、開発量産用プロジェクトライセンスのライセンス費用の40%オフの価格でアップグレードが可能です。

開発量産用プロジェクトライセンス

開発量産用プロジェクトライセンスは、研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンスとなります。開発量産用プロジェクトライセンスの対象製品の範囲には、1種類の製品型番だけでなく、その製品ファミリ(派生機種)が含まれます。

有償の保守契約に加入中の場合、プラットフォームライセンスのライセンス費用との差額でアップグレードが可能です。

プラットフォームライセンス

プラットフォームライセンスは、プロジェクトライセンスの対象範囲を広げたライセンスです。プラットフォームライセンスの対象製品は、1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリが範囲となります。サイトライセンスではございません。

※弊社のライセンスはプロジェクトライセンスの形式を採っております。ご購入時に該当プロジェクトの名称をご登録頂く必要があり、その際、「計測機器」などの抽象的な名称ではなく、具体的な名称を頂戴しております。

お客様のご要望をお聞きした上で適切な範囲を設定させて頂きますので、先ずは、担当営業にご相談下さい。

ポイント
  • 研究開発用プロジェクトライセンス:製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めなライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス:研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンス
  • プラットフォームライセンス   :1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリを範囲とするライセンス

ライセンスの詳細

  • ライセンス費用の金額・計算方法:ライセンス購入時の固定の一括払いのみでご使用いただけます
  • 開発人数制限 :無(ただし同プロジェクト内)
  • 提供形態 :ソースコード
  • 使用範囲 :定義されたプロジェクト内
  • 使用CPU :型番固定ではなくCPUシリーズ(例:STM32F4シリーズ)
  • μC3/ConfiguratorはCPUシリーズ毎に用意されています

ライセンスの価格などの詳細については、下記よりプロダクトガイドをダウンロードしてご覧ください。

資料ダウンロード(無料)

保守について

製品定価には契約日の翌月1日から6ヶ月分の無償保守が含まれています。その後、有償で保守を継続することが可能です。

また、年間保守費用は製品定価の40%になります。

無償保守期間終了後、継続して有償保守サービスにご加入いただいた場合は、製品定価の20%になります。(ただし、初年度分の保守とライセンスをセットで購入された場合は、初年度分に限り製品定価の15%になります。)

*研究開発用プロジェクトライセンスの保守費用は開発量産用プロジェクトライセンスの定価の20%になります。

保守サービスには以下が含まれています。

  • メールによる技術サポート(1営業日以内に1次回答)
  • 製品の無償バージョンアップ

LPC4300とμC3/Compactの導入事例

  • 時間管理用機器・システムメーカー製 勤怠・入室・入場・食堂管理端末向けプラットフォーム
  • センサ搭載通信端末機器メーカー製 ゲートウェイ端末

など