工場の生産ラインやビルのエレベーターのようにモーター、センサー、メーターをPLCに繋いで自動制御する際に、フィールドネットワークの1つとしてModbusが用いられます。ModbusはFA機器を中心に世界中で採用されているフィールドネットワークです。無料で利用できることに加え、実装も容易なのがメリットです。
本記事では、Modbusの概要やメリット、3つの通信方式の違いまでを詳しく解説します。スマートファクトリー化が進む現代において、Modbusの重要性はますます高まっています。ぜひ最後までご覧ください。
Modbusとは
Modbusは1979年に米国Modicon社が開発したフィールドネットワークです。
PLCと呼ばれる制御装置間でデータをやり取りするために使用され、仕様が公開されて無料で利用できます。
主な用途は、工場の生産設備やボイラー制御、エレベーターの制御システムなどです。PLCを使用した産業機器の自動化に不可欠な通信規格として、世界中の製造現場で採用されています。
Modbusの歴史的な発展は、フィールドネットワークの進化を示す良い例です。組込み機器のネットワーク化の歴史について、より詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
PLCとは
PLC(Programmable Logic Controller)は、産業機器や設備を制御するためのコンピュータシステムです。工場の生産ラインやロボット、センサー類の制御から、エレベーターやエスカレーターといった身近な設備の制御まで、幅広い用途で使用されています。
入力機器からの信号を受け取り、あらかじめ設定されたプログラムに従って処理を実行し、出力機器を制御する仕組みになっています。日本では三菱電機製のPLCが「シーケンサ」として知られており、PLCのことを「シーケンサ」と呼ぶことも一般的です。近年では家電製品の制御にも採用され、産業分野に限らず私たちの生活に密接に関わっています。
Modbusのメリット
Modbusの主なメリットを3つ紹介します。
無料で利用できる
仕様書が一般公開されており、誰でも無料で利用できるので、導入コストを抑えることが可能です。
容易に実装できる
他の通信プロトコルと比較して、メッセージ形式がシンプルで分かりやすく、システムへの実装や不具合の特定が容易です。
FA機器メーカー各社が採用している
Modbusは三菱電機やキーエンス、オムロンなどの主要なFA機器メーカーが採用しています。
Modbusの主な種類
Modbusの代表的な種類は以下の3つです。
- Modbus RTU
- Modbus TCP
- Modbus ASCII
それぞれ詳しく解説します。
Modbus RTU
シリアル通信を使用する最も一般的なModbus形式です。データをバイナリ形式で送受信し、主にRS-485規格の物理層を採用しています。シンプルな構造ながら高い信頼性を持ち、データの整合性は16ビットのCRC(巡回冗長検査)によって確保されます。ハードウェア構成の自由度が高い反面、メーカーによって仕様解釈が異なる場合があるため、実装時には注意が必要です。
Modbus TCP
イーサネットを使用したTCP/IP通信を採用する方式です。標準的なネットワーク機器やLANケーブルが使用でき、ポート502を介して通信します。TCPプロトコル自体がデータの整合性チェック機能を持っているため、追加のチェックサム計算は不要です。既存のネットワークインフラを活用できる点が大きな特徴です。
Modbus TCPについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:イー・フォース株式会社「Modbus TCP」
Modbus ASCII
ASCII文字を使用してデータを送受信する方式です。メッセージは「:」(コロン)で始まり、CR/LF(改行コード)で終わる明確な構造を持っています。データの検証にはLRC(縦方向冗長検査)を使用します。可読性が高く、デバッグが容易なのが特徴です。
まとめ|Modbusについて解説しました
Modbusは1979年に開発されたフィールドネットワークで、PLCなどの制御装置間でデータを送受信するために使用されています。無料で利用でき、実装が容易なことに加え、様々なメーカーの機器を柔軟に組み合わせて使用できる特徴から、製造業を中心に広く普及しています。
主な通信方式は、シリアル通信を使用するModbus RTU、ネットワーク通信に適したModbus TCP、可読性の高いModbus ASCIIの3種類です。産業機器の自動化に不可欠な通信規格として世界中で採用されています。