電気自動車の普及が進む中、充電インフラを効率的に運用することが重要となっています。そこで注目を集めているのが、充電管理システムの通信規格のOCPPです。
本記事では、OCPPの特長や重要性とOCPIとの関係性について紹介します。
OCPPとは?
OCPPは、Open Charge Point Protocolの略称で、電気自動車(EV)のネットワーク化された充電ステーションと充電管理システムの通信に使用される国際標準通信プロトコルです。
この規格により、充電などの課金や充電器の保守・運用などを、専用の端末や特別なネットワークを介さずに実施できます。
これにより、利用者はCHAdeMOやType 2 CCSといった充電技術を使用して、違う充電器メーカーやクラウドサービス提供者に、柔軟に対応できるようになります。
OCPPの特長
OCPPの特長は次のとおりです。
特長1:互換性の向上
異なるメーカーの充電器と充電管理システム間で互換性を保つことができます。
OCPPの採用により、充電器の製造メーカーや充電サービスプロバイダが異なっても、互いの機器やシステムが円滑に連携可能となり、充電器のメーカーやモデルへ依存しません。
充電インフラの提供側にとっては、充電器の調達や管理が容易になり、利用者にとっては充電インフラの利用がシンプルになるというメリットがあります。
特長2:柔軟な選択
OCPPを充電インフラに採用すると、充電器のベンダを選ぶ際の選択肢が大幅に広がります。
従来は特定のベンダに依存せざるを得ませんでしたが、OCPP対応機器であれば、ベンダを気にすることなく製品を幅広い選択肢から選べます。
企業は充電インフラの構築において、ベンダロックインの問題から解放され、コストの最適化や、戦略に合わせて最適な充電器の選定が可能です。
特長3:リモート管理
OCPPを活用すれば、リモート管理も可能になります。
充電ステーションのオペレーターは、充電器の稼働状況やエネルギー消費量、課金情報などの各種データをリアルタイムで監視できます。さらに、需要の変化や特定の要件に応じた充電料金の設定やスケジュール管理なども可能です。
特長4:エネルギー分配の最適化
1つの場所に設置された複数の充電器間の負荷分散などができます。
利用可能な電力リソースを柔軟かつ効率的に活用しながら、複数の充電器間でエネルギーの分配を最適化してくれます。
このようなエネルギー管理の最適化は、充電インフラの運用コストの削減や、再生可能エネルギーの有効活用にもつながります。
OCPPのスマートグリッドでの使用
近年、SDGsの推進に伴い様々な分野で環境への配慮や、従来とは異なる仕組みづくりが求められるようになってきています。
その一つが、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの効率的な活用です。また、電力を大容量バッテリーに蓄電し、需要に合わせて適切なタイミングで使用するという方法も注目されています。
急速に普及が進んでいる電気自動車と充電管理システムも、スマートグリッドの一端を担うことが期待されています。
そのためには、 電気自動車と充電管理システム の接続・連携に、共通の通信規格が必要不可欠です。ここで重要な役割を果たすのが、OCPPなのです。この規格は、充電器と充電管理システムの間の相互運用性を高め、電力の効率的な配分や課金管理など、様々な機能を実現することができます。
OCPPは、持続可能な充電インフラの構築と、スマートグリッドの実現に不可欠な技術基盤といえるでしょう。SDGsの推進やカーボンニュートラルの実現に向けて、OCPPの重要性はますます高まっていくと考えられます。
OCPPとOCPIの関係性
OCPPとOCPIはどちらも電気自動車の充電インフラにおいて重要な役割を果たしています。似たような名前ですが、両者はそれぞれ異なる役割と目的を持っています。
ここからは、OCPPとOCPIの関係性について紹介します。
OCPIとは?
OCPIは、Open Charge Point Interfaceの略称で、異なる電気自動車充電ネットワーク、サービスプロバイダ間などの円滑な連携を促進するためのオープン標準プロトコルです。
OCPIの主な目的は、電気自動車利用者がどこにいても、問題なく充電できるようにすることです。具体的には、ローミング機能の提供や、充電ステーションの空き状況・稼働状況に関するリアルタイム情報の共有、課金トランザクションの正確な管理など、充電インフラの利便性向上を目指しています。
OCPIの活用により、利用者は一つのアクセスカードやモバイルアプリで、様々な充電ネットワークの充電ステーションを利用できます。
OCPPとOCPIの関係性
OCPIとOCPPは、電気自動車の充電インフラを支える2つの重要な規格ですが、それぞれ異なる目的を果たしています。
OCPI は、電気自動車利用者がさまざまな充電ネットワークに簡単にアクセスしてローミングできるよう、充電インフラ提供側の円滑な運営を高めることに重点を置いています。つまり、ユーザー目線での充電の利便性向上が主な目的です。
一方、OCPPは、充電ステーションと充電管理システム間の通信プロトコルとして機能し、充電インフラの効率的な運用を実現することに焦点を当てています。
実際には、多くの充電インフラでは、OCPIとOCPPの両方を活用して包括的な充電サービスを提供しています。
OCPI によって電気自動車ドライバーのローミングを可能にし、一方でOCPPによって充電ステーションが効率的に管理され、ネットワーク上のシステムと確実に連携できるようになるのです。
OCPPとOCPIは、進化する電気自動車充電インフラにとって不可欠な存在といえます。両者を組み合わせて活用することで、利用者の利便性向上と充電インフラの効率化が同時に実現できるのです。
IoTサービスでの活用事例
デルタ電子株式会社は、IoTテクノロジーを活用した先進的な充電サービスプラットフォーム「EZQC」を開発しました。
「EZQC」は、OCPPを採用し、スマートフォンアプリと連携することで、ユーザー登録や決済、充電操作などをシームレスに行えるサービスを提供しています。ユーザーは事前の個人情報登録なしに、どの充電器でも簡単に利用できるため、利便性が大幅に向上します。
また、「EZQC」は充電データの収集と制御が可能なため、電力供給の負荷管理にも有効活用できます。急速充電器の急増に伴う電力需要の増加は大きな課題ですが、本サービスの活用により、最適な電力配分が実現できるのです。
このようにIoT技術とOCPPの組み合わせにより、使いやすさと効率性を両立した充電サービスが提供されています。
参考:スマートフォンを利用した電気自動車用充電管理サービス「EZQC」
まとめ
本記事では、OCPPとはなにか、特長や重要性、OCPIとの関係性を紹介しました。OCPPは、電気自動車の充電インフラ構築において重要な標準規格プロトコルです。今後もOCPPは、電気自動車の普及を支える基盤技術として発展していくと考えられます。