さまざまな電子機器にコンピュータが組み込まれ、利便性向上のためネットワークに接続されるようになった昨今、不具合改善やセキュリティへの対策として、最新のソフトウェアであることが求められます。
しかし、近年はさまざまなモノがインターネットに繋がるIoTの時代でもあります。世の中に大量のデバイスが存在し、かつてのように有線で個別にアップデート対応するのは非常に大変です。
そこで、ソフトウェアをアップデートする方法として、無線通信で更新・変更するOTA(Over The Air)技術が注目されています。
本記事ではOTA技術のメリットや留意点、BLEでの利用について紹介します。
OTA(Over The Air)技術とは
OTA技術とは、データの送受信を無線通信で行なう技術です。
デバイスがワイヤレスでアップデートパッケージをダウロードし、アップデートを実行します。
スマートフォンではすでにOTAによるアップデートが主流になっていますが、IoT機器や自動車に対してもソフトウェアやファームウェアのアップデートができます。
OTA技術の必要性
頻繁なアップデートを行なう機器に最適
OTA技術の活用によって、ユーザー側はソフトウェアアップデートにかかる手間を削減できます。
例えばこれまでアップデート対応においては、PCとデバイスを接続し、アップデート用のファイルを転送したり、外付けストレージ(SDカードなど)にファイルをPCで保存し、デバイス本体に差し替えてアップデートなどを行なっていました。頻繁なアップデートが必要な機器では、都度この対応が必要ということになります。
OTA技術を利用する場合は、自動アップデートが実行されるか、もしくは通知に沿って各ユーザーが簡単にアップデートできるため、先述したような膨大な時間をかける必要がなくなります。
そして、ソフトウェア提供側にとっても、ユーザー側のアップデートの手間が減ったことで、こまめにバグの修正や新機能追加ができるというメリットがあります。
ソフトウェアの品質を向上させることで製品のライフサイクルを長くし、新機能を求めるユーザーに他社サービスに乗り換えられることなく、長く愛用してもらうこともできます。
OTA技術の留意点
OTA技術には上記のようなメリットもありますが、留意点もあります。
セキュリティ面の留意が必要
OTA技術はソフトウェアを最新のものにするという点ではセキュリティを高めますが、OTA技術自体はサイバー攻撃の脅威にさらされやすいという注意点があります。
ダウンロードするソフトウェアはOTAセンターと呼ばれるデータセンターから送信されますが、サイバー攻撃によって通信データが改ざんされたり、悪意ある偽のソフトウェアが配信されるリスクなどがあります。
人の手を全く、もしくはほとんど介しない更新方法であるため、通信時の暗号化や署名の検証といったセキュリティ対策が必要不可欠です。
弊社ではIoTデバイス向けの暗号化通信に関する記事「TLSとは?(1)IoTデバイス向けの暗号化通信を紹介」やサイバーセキュリティに関する記事「セキュア通信をコンパクトに実現する方法(1)サイバーセキュリティの脅威とは?」もご紹介しています。興味のある方はぜひご覧ください。
OTAをBLE通信で実現
BLE通信によるOTA
スマホに搭載されている無線通信の1つであるBluetooth®に含まれるBLEでもOTAを行なうことが出来ます。これにより、インターネットに直接つながっていない機器もスマホ経由で手軽にアップデートが行なえます。
BLEとはBluetooth® 4.0で新規に追加された通信規格で、従来のBluetooth®規格(一般的にBluetooth® Classicと呼ばれる)との互換性はありません。
BLEについては記事「Bluetooth®とBLEとは?概要や違い、特長を解説」でも紹介しています。詳しく知りたい方はご覧ください。
BLE通信の導入方法
BLEはIoT機器や組込み機器で利用を検討されることが多い反面、電波法認証やBluetooth®のロゴ認証の面で、少量生産の製品などには導入しづらい難点がありました。
電波法認証取得済みの市販のBLE対応USBアダプタを使用できればその課題を解決することができます。
そこで弊社イー・フォースは株式会社グレープシステムとSDK「BLE+USB Entry Pack」を共同開発し、市販されているBLE対応USBアダプターに、BLEによる無線通信を実現するプロトコルスタック「μC3-BLE Stack」とミドルウェア「GR-USB/HOST」をパッケージ化しました。
無線機能のハードウェア開発、電波法の認証取得などの工数を大幅に削減できる製品ですので、気になる方は弊社までお問合せください。
まとめ
IoT時代のソフトウェアアップデート方法として、OTA技術を紹介しました。
OTAによってユーザーのソフトウェア更新が面倒ものでなくなりつつあります。
提供側はセキュリティ対策をしっかりと行ないながら実装してください。