RX72Nとは、ルネサスエレクトロニクス(以下、「ルネサス」)のマイコンです。RX72Nは、RXv3 コアを搭載しており、高性能なリアルタイム制御とネットワーク機能、HMI、セキュリティなどの機能をシングルチップで実現しています。
RX72Nシリーズのラインアップ
RX72Nシリーズは、以下の2種類に大別されます。
- R5F572NN
- R5F572ND
RX72Nシリーズの仕様
R5F572NN | R5F572ND | |
---|---|---|
CPUコア | RXv3 core | RXv3 core |
プログラムメモリ (KB) | 4096 | 2048 |
ビットサイズ | 32 | 32 |
RAM (KB) | 1024 | 1024 |
RX72Nとは
RXファミリの製品ラインアップ
RXファミリは、高い演算性能と優れた低消費電力性能を実現するルネサス社製の32ビットマイクロコントローラです。RXファミリは、ルネサス製マイコンの主力製品シリーズであり、その特徴として、ルネサスオリジナルのRXコアを搭載しています。
RXファミリのマイコンは、主に下記の4つに分類されています。
- 超低消費電力・エントリシリーズ :RX100
- 低消費電力と高性能のベストミックス:RX200
- 高性能・豊富なラインアップ :RX600
- 最高速・高機能RXフラッグシップ :RX700
RX72Nは、RXファミリの中でも最も高性能なRX700シリーズに属します。
RX72Nとは
RX72Nグループマイコンは、RXの第3世代のCPUコア「RXv3コア」を搭載し、240MHzで動作するハイパフォーマンス製品です。 120MHzでの読み出し動作が可能な4MBのフラッシュメモリ、1MBのSRAM、182本もの汎用入出力ポートにより、機器のリアルタイム制御とネットワーク機能をシングルチップで実現します。 産業、民生機器に要求されるHMI、セキュリティ等の機能も同時にカバーし、筐体の小型化と開発期間の短縮に貢献します。
RX72Nは、RXv3コアを搭載し、最大240MHzで動作するマイコンです。
RX72Nの特長
RX72Nの特長は、以下の通りです。
- 業界最速クラスの内蔵フラッシュメモリやFPUなどによる高いリアルタイム性能
- 業界最大クラスの内蔵メモリと多ピンパッケージによる小型化
- イーサネットを始めとする主要なネットワーク機能を搭載
- HMI機能により、機器のデザイン性や操作性を向上
- セキュリティ機能により、通信データやプログラムを保護
【特長1】業界最速クラスの内蔵フラッシュメモリやFPUなどによる高いリアルタイム性能
RX72Nは、以下の内部機能を搭載しています。
- 120MHzでの読み出し動作が可能な4MBのフラッシュメモリ
- 240MHzで動作するRXv3コアを搭載
- 倍精度FPU
- レジスタ一括退避機能
RX72Nは、これらの特徴によって高いリアルタイム性能を実現しています。
120MHzでの読み出し動作が可能な4MBのフラッシュメモリ
RX72Nは、120MHzでの読み出し動作が可能な4MBのフラッシュメモリを内蔵しています。
フラッシュメモリ
フラッシュメモリとは、記憶装置の1つであり、電源を切っても記憶内容が維持される、不揮発性の半導体メモリ・ROM。本来、ROMは、データの消去や書き込みができないが、フラッシュメモリは、例外的にデータの消去や書き込みができるROM。
240MHzで動作するRXv3コアを搭載
RX72Nは、RXv3コアを搭載し、240MHzで動作するハイパフォーマンスなマイコンです。
倍精度FPU
RX72Nは、倍精度FPUを搭載しています。
FPU(読み方:エフピーユー)とは
「浮動小数点演算装置」を意味するFloating-Point Unitの略。浮動小数点数の演算に特化した演算装置。FPUのうち、32ビットの浮動小数点で表現するものを「単精度FPU」、64ビットのものを「倍精度FPU」と呼ぶ。
レジスタ一括退避機能
RX72Nは、RXファミリの特徴であるレジスタ一括退避機能を搭載しています。レジスタ一括退避機能により、割り込み応答の高速化を実現しています。
レジスタ一括退避機能とは
レジスタ一括退避機能とは、RXv3コアに搭載されているレジスタ退避バンクと、それを使用するための命令のこと。この機能により、CPU レジスタの退避・復帰を一括して高速に実行できる。
【特長2】業界最大クラスの内蔵メモリと多ピンパッケージによる小型化
RX72Nは、デュアルバンク機能を搭載した、高性能な4MBフラッシュメモリを搭載しています。
デュアルバンクとは
フラッシュメモリが2つ備わった状態のこと
また、182本もの汎用入出力ポートを搭載しており、ワンチップで高機能を実現しています。
【特長3】イーサネットを始めとする主要なネットワーク機能を搭載
RX72Nは、以下のネットワーク、高度な通信I/Fを搭載しています。
- 2ch Ethernet
- SDホストI/F
- USB 2.0 フルスピード
- 3ch CAN、QSPI
【特長4】HMI機能により、機器のデザイン性や操作性を向上
RX72Nは、豊富なHMI機能を搭載しています。
HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)とは
人間と機械が情報をやりとりするための手段や道具の総称。コンピュータにおけるHMIは「ユーザーインターフェース(UI)」と呼ばれることが多い。
RX72NのHMI機能は、以下の通りです。
- TFT LCDコントローラ
- 2D描画エンジン
- シリアルサウンドI/F
- CMOSカメラI/F
【特長5】セキュリティ機能により、通信データやプログラムを保護
RX72Nは、暗号エンジン、鍵管理、フラッシュメモリ保護機能といった豊富なセキュリティ機能を搭載しています。
暗号化とは
暗号化とは、データを第三者が解読できないように一定のルールのもとに変換すること。暗号化によって、権限の無い照会や使用からデータを保護する。
暗号化については、以下の記事をご覧ください。
RX72Nは、以下の暗号エンジンを搭載しています。
- AES
- TDES
- RSA
- ECC
- SHA
- TRNG
各暗号エンジンについては、以下の以下の記事をご覧ください。
これらの高度なセキュリティ機能により、通信データやプログラムを保護しています。
RX72Nの使い方(アプリケーション)
上記の特徴により、RX72Nは、高性能なリアルタイム制御とネットワーク機能、HMI、セキュリティなどの機能をシングルチップで実現しています。
この特徴から、RX72Nは、産業オートメーション機器に最適なデバイスです。
具体的には、以下のアプリケーションに適しています。
- 産業
- 民生
- OA
RX72Nの入手方法
RX72Nは、下記のルネサスの特約店・取扱店や、オンラインショップなどで購入できます。
RX72Nの開発環境
RX72Nに対応した代表的な開発環境は、下記の通りです。
- e2studio
- CS+
- IAR Embedded Workbench for RX
RX72Nの評価ボード
RX72Nの評価ボードは、以下の通りです。
特徴 | 対象 | データシート | |
---|---|---|---|
Renesas Starter Kit+ for RX72N | LCDディスプレイモジュール、オンチップデバッギングエミュレータ、統合開発環境を添付 | すぐにRX72Nの評価を始めたい方 | Renesas Starter Kit+ for RX72Nのデータシート |
RX72N Envision Kit | 4.3インチLCDコントローラや、オーディオIC+オーディオジャック、MEMSマイクを搭載 | まずはHMIを中心に評価したい方 | RX72N Envision Kitのデータシート |
RX72N-RXC | 各種産業イーサネット通信機能のほか、CANやUARTなどの通信インタフェースやモータ制御機能を搭載 | RX72Nを使ってGUI画面を簡単・迅速にデザインしたい方 | – |
Renesas Starter Kit+ for RX72N
Renesas Starter Kit+ for RX72Nは、RX72Nの入門用に最適なスターターキットです。CPUボードだけでなく、LCDディスプレイモジュール、オンチップデバッギングエミュレータ、統合開発環境が添付されています。
これらの特長からRenesas Starter Kit+ for RX72Nは、「すぐにRX72Nの評価を始めたい」という方に最適の評価ボードです。
Renesas Starter Kit+ for RX72Nの価格・購入場所
RX72N Envision Kit
RX72N Envision Kitの特徴は、LCDを使ったGUI作成や、音声入出力などのHMI機能を手軽に評価できることです。
4.3インチLCDコントローラや、オーディオIC+オーディオジャック、MEMSマイクを搭載しているため、HMIを中心に評価できます。
また、USBケーブル経由で電源を供給すれば、プリインストールされている2種類のデモソフトウェアでRX72Nの特長を簡単に体験できます。
これらの特長から、RX72N Envision Kitは、「まずはHMIを中心に評価したい」という方に最適の評価ボードです。
AP-RX72N-0A
AP-RX72N-0Aは、アルファプロジェクト社製の評価ボードです。
AP-RX72N-0Aは、各種産業用イーサネット通信機能のほか、CANやUARTなどの通信インタフェースやモータ制御機能を搭載しています。
また、グラフィックLCDコントローラを搭載しているほか、アルファプロジェクト社製のGUI統合開発環境「GESL2」を無償で利用できます。
これらの特長から、AP-RX72N-0Aは、「RX72Nを使ってGUI画面を簡単・迅速にデザインしたい」という方に最適の評価ボードです。
RX72Nの対応OS
RX72Nに対応している主なOSは、以下の通りです。
- RI600V4
- RI600PX
- FreeRTOS
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(弊社製品)
弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介
高性能リアルタイム処理向けRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard」
μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standardは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOSです。
μC3/Standardは、高性能プロセッサがより高度なリアルタイム制御に耐えられるよう、割込み禁止時間を極力なくし、割込み応答性を最重要課題として設計したRTOSです。
ARM Cortex-Aシリーズ、ARM Cortex-Rシリーズだけでなく、高性能な ARM Cortex-MやRenesas RXシリーズにも対応しています。
- 32/64bitの高性能プロセッサに最適化
- 割り込み応答性を高め、32/64bitの高性能プロセッサ向けに最適化されたμITRON4.0仕様のカーネル。
- 豊富なプロセッサ・サポート
- 業界随一のプロセッササポート実績があり、技術サポートも充実しています。CPUの選択肢を広げ、機会費用を抑える事ができます。業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。ご使用予定のデバイスで直ぐに開発着手が可能で、ご質問に対して24時間以内の1次回答を徹底しています。
- マルチコア対応
- 組込み機器向けに最適なAMP型カーネル。マルチコアによって、リアルタイム性能を強化します。
- 豊富なデバイスドライバを用意
- I2C, SPI, GPIO, SDなどのデバイスドライバをオプションで用意。(UART, Timer, INTCはμC3に、EthernetドライバはμNet3に付属しています。)
詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。
μC3のライセンスの種類・詳細
ライセンスの種類
ライセンスの種類は3つあります。
- 研究開発用プロジェクトライセンス
- 開発量産用プロジェクトライセンス
- プラットフォームライセンス
研究開発用プロジェクトライセンス
研究開発用プロジェクトライセンスは、研究開発のみ可能なライセンスです。ライセンス購入時の段階で、製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めです。
研究開発用プロジェクトライセンスのライセンス費用は、このあとご紹介する開発量産用プロジェクトライセンスの60%の価格です。
有償の保守契約に加入中の場合、開発量産用プロジェクトライセンスのライセンス費用の40%オフの価格でアップグレードが可能です。
開発量産用プロジェクトライセンス
開発量産用プロジェクトライセンスは、研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンスとなります。開発量産用プロジェクトライセンスの対象製品の範囲には、1種類の製品型番だけでなく、その製品ファミリ(派生機種)が含まれます。
有償の保守契約に加入中の場合、プラットフォームライセンスのライセンス費用との差額でアップグレードが可能です。
プラットフォームライセンス
プラットフォームライセンスは、プロジェクトライセンスの対象範囲を広げたライセンスです。プラットフォームライセンスの対象製品は、1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリが範囲となります。サイトライセンスではございません。
※弊社のライセンスはプロジェクトライセンスの形式を採っております。ご購入時に該当プロジェクトの名称をご登録頂く必要があり、その際、「計測機器」などの抽象的な名称ではなく、具体的な名称を頂戴しております。
お客様のご要望をお聞きした上で適切な範囲を設定させて頂きますので、先ずは、担当営業にご相談下さい。
ポイント
- 研究開発用プロジェクトライセンス:製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めなライセンス
- 開発量産用プロジェクトライセンス:研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンス
- プラットフォームライセンス :1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリを範囲とするライセンス
ライセンスの詳細
- ライセンス費用の金額・計算方法:ライセンス購入時の固定の一括払いのみでご使用いただけます
- 開発人数制限 :無(ただし同プロジェクト内)
- 提供形態 :ソースコード
- 使用範囲 :定義されたプロジェクト内
- 使用CPU :型番固定ではなくCPUシリーズ(例:STM32F4シリーズ)
- μC3/ConfiguratorはCPUシリーズ毎に用意されています
ライセンスの価格などの詳細については、下記よりプロダクトガイドをダウンロードしてご覧ください。
保守について
製品定価には契約日の翌月1日から6ヶ月分の無償保守が含まれています。その後、有償で保守を継続することが可能です。
また、年間保守費用は製品定価の40%になります。
無償保守期間終了後、継続して有償保守サービスにご加入いただいた場合は、製品定価の20%になります。(ただし、初年度分の保守とライセンスをセットで購入された場合は、初年度分に限り製品定価の15%になります。)
*研究開発用プロジェクトライセンスの保守費用は開発量産用プロジェクトライセンスの定価の20%になります。
保守サービスには以下が含まれています。
- メールによる技術サポート(1営業日以内に1次回答)
- 製品の無償バージョンアップ