
「Hey Siri」や「OK Google」といった音声での操作が、私たちの生活に徐々に浸透してきました。
スマートフォンやスマートスピーカー、カーナビなど、音声操作に対応する製品が増える中、その基盤技術となる「VUI(Voice User Interface)」への注目が高まっています。
本記事では、VUIの概要やメリット・デメリット、活用事例などを具体例を交えながら解説します。
VUI(Voice User Interface)とは
VUI(Voice User Interface)とは、人間の声を認識して機器を操作できるインターフェースです。従来のマウスやタッチパネルなどの物理的な操作とは異なり、人の声で直接指示を出せるのが特徴です。
代表的な例として、iPhoneのSiriやGoogleアシスタントなどが挙げられます。これらは音声認識技術とAIを組み合わせることで、人間の声による自然な対話を実現しています。
VUI以外のUI(CUI、GUI、NUI)
UI(ユーザーインターフェース)は、時代とともに大きく進化しており、いくつかの種類があります。
UIの種類 | 特徴 |
CUI(Character User Interface) | 文字にてコマンドを入力し操作ができる |
GUI(Graphical User Interface) | マウスなどのデバイスで画像やボタンから操作ができる |
NUI(Natural User Interface) | スマホやタブレット端末にてタッチ操作ができる |
UIの進化には「専門家から一般ユーザーへ」「複雑な操作から直感的な操作へ」という流れがあります。Windowsのコマンドプロンプトや、Mac OSのターミナルなどから行うCUIは、システム構成とコマンド入力の知識が必要でしたが、GUIの登場でグラフィカルな操作が可能となりました。
最近は、スマートフォンやタブレット端末の普及によりNUIも主流になり、ユーザーによる直感的に操作が実現できるようになっています。
VUIのメリット

VUIによって得られるメリットは以下の通りです。
音声だけでデバイスを操作できる
VUIの最大の特徴は、音声コマンドによる直感的な操作が可能な点です。
例えば、スマートフォンでアラームを設定する場合、
- アプリを開く
- 時間を選択
- 曜日を指定し
- 音を選択
上記の通り複数の操作が必要でした。しかし、VUIからの操作により、「明日の朝7時にアラームをセットして」という音声コマンドのみで完了します。また、家事や運転などで手が塞がっている状況でも操作が可能なため、家電や車載システムとの相性もよいです。
アクセシビリティの向上
VUIは画面やボタン操作が不要なため、視覚障害者や高齢者など、従来のUIを使いにくいユーザにとっても有益です。
VUIを搭載したスマートスピーカーなどでは、「今日のニュースを読んで」「明日の予定を教えて」といった音声指示により情報を取得でき、より簡単にデジタル機器を利用できるようになります。
VUIのデメリット
VUIにはいくつかのデメリットもあります。
利用シーンが制限される
VUIは公共の場では使いづらいという課題があります。
例えば、オフィスや図書館、電車内での音声指示は難しくVUIの利用が制限されてしまいます。そのため、活用の機会が家庭内や車内などのプライベートな空間での利用に限定されてしまう場合があります。
音声認識精度の課題
AI技術の進歩により認識精度は向上していますが、まだ完璧ではありません。
使用者の方言や、話すスピードの違いや、バックグラインドノイズの多い場所での使用でも認識率の低下につながります。また、音声コマンドに含まれる専門用語や固有名詞、同音異義語の判断も認識がされない場合があります。
複雑な開発作業が必要とされる
VUIを実装するには、特定の単語やフレーズを使った学習だけでは不十分です。音声指示などの自然言語は、決まったルールや法則に依存しないためです。VUI操作による指示をリアルタイムで実現するためには、膨大な開発作業が必要となることも課題となっています。
限られたリソースでのVUI実装
従来の音声認識技術ではリッチなハードウェアと複雑なソフトウェアが必要でしたが、MCUの限られたメモリリソースで実行できるようになってきています。
Cyberon DSpotterでは、音声を音素単位で処理し、最小限の計算リソースで高精度な認識を実現する技術を採用。ネットワークへの接続が不要でオフラインでの動作が可能となります。
また、音素ベースのモデリングアプローチによりテキストデータより音声ユーザコマンドを迅速にカスタマイズし、少量の音声データで最適化が実現でいきます。小さなフットプリントが特徴で省リソースで高精度のパフォーマンスを発揮することが可能です。
Renesas社のRAファミリやRX671,RX72Nに対応しており、現在44以上の言語にも対応しております。
VUI開発支援ツール
Renesas社RA8M1を搭載したVUIソリューションキット VK-RA8M1
32ビットMCUのRAファミリーをベースにしており、ルネサス社が提供しているVUIパートナー対応ソリューションが使用でき、Cyberon DSpotterにも対応しています。
これらのツールにより、豊富なコーディング経験や専門知識がなくても効率的にVUI開発が可能となります。
VUIの活用事例

スマートスピーカー
AppleのSiriやGoogleのGoogleアシスタント、AmazonのAlexaなど、複数の企業がスマートスピーカー向けのVUI技術を開発しています。
「天気を教えて」「音楽を再生して」といった音声での指示により操作が可能です。
スマート家電
近年、VUIを搭載したスマート家電が増えております。例えば、スマート冷蔵庫では、在庫情報を音声で通知したり、音声でのレシピの検索などが可能なものもあります。
そのほか、エアコンや洗濯機などでもVUIの採用が広がっており、さらに利便性が向上すると考えられています。
車載システム(カーナビ)
カーナビでもVUIの活用が進んでおり、「東京駅まで案内して」「近くのガソリンスタンドを探して」といった指示を、音声だけで実行できます。最新のVUI対応カーナビでは、エアコンの温度調整や音楽の再生も、音声で操作可能になり、運転中の安全性向上に貢献しています。
まとめ|VUIについて解説しました
VUIは、音声だけで操作をできる利便性と、誰でも使いやすいアクセシビリティの高さをもつUIです。一方で、公共の場での使いにくさや音声認識精度などの、いくつかの課題も存在します。
しかし、MCU上で動作する軽量な音声認識技術や開発支援ツールの進化により、組込みシステム開発でのVUIの実装が簡単に実現できるようになってきています。今後の発展により、幅広い組込み機器に採用されていくことが期待されます。