インターネットの普及とともに、Wi-Fiは私たちの生活に欠かせない存在になりました。スマートフォンやタブレット、PCなど様々な端末で利用され、動画の視聴や大容量ファイル転送、オンラインゲームなど、用途は多岐にわたります。
Wi-Fiの高速化と安定化は、今後ますます重要になってくるでしょう。本記事では、現行のWi-Fi 6と次世代規格であるWi-Fi 7について解説していきます。
Wi-Fi 6とWi-Fi 7の違いを比較
Wi-Fi 6とWi-Fi 7の主な違いを比較してみました。以下の表を参考に、各規格の特長を見てみましょう。
Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6E | Wi-Fi 7 | |
---|---|---|---|
IEEE規格 | 802.11ax | 802.11be | |
最大通信速度 | 9.6Gbps | 46Gbps | |
周波数帯 | 2.4GHz/5GHz | 2.4GHz/5GHz/6GHz | 2.4GHz/5GHz/6GHz |
チャンネル幅 | 20, 40, 80, 80+80, 160 MHz | 最大320MHz | |
変調方式 | 1024-QAM sOFDMA | 4096-QAM OFDMA | |
MAC | – | MLO |
出典:総務省 IEEE 802.11be(Wi-Fi 7)の導入について
Wi-Fi 6について
ここでは、Wi-Fi 6について解説します。
第6世代のWi-Fi 6とは
2019年9月に提供が開始されたWi-Fi 6は、IEEE 802.11axとしても知られるWi-Fi規格です。Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)から大幅に性能が向上しており、多数のデバイスが同時接続を行っても安定した通信ができます。Wi-Fi 6を拡張した規格である、Wi-Fi 6 Eも2022年に提供が開始されています。Wi-Fi 6の特長、第5世代と比べて優れている点は?
Wi-Fi 6には、以下4つの特長があります。
【特長1】高速通信
Wi-Fi 6は、従来のWi-Fi 5に比べて約1.4倍の高速通信を実現しています。これにより、8Kや4Kなどの高解像度の映像配信が可能となり、大容量データの送受信もスムーズに行えます。さらに、Wi-Fi 6では5GHz帯と2.4GHz帯、Wi-Fi 6Eでは6GHz帯も追加され、混雑回避と安定した高速通信が実現できます。2.4GHz帯においても、「1024QAM」の導入により、従来に比べて通信速度が大幅に向上し、全周波数で高速かつ柔軟な周波数利用が可能になりました。
【特長2】省エネルギー
Wi-Fi 6では、「TWT」と呼ばれるスマートフォンなどの端末側のバッテリー消費を抑える技術が導入されました。これは親機から端末への送信タイミングを最適化し、受信が不要な時はスリープ状態に移行させることで、無駄な電力消費を抑える仕組みです。スマートフォンなどのバッテリー駆動デバイスでの活用が期待されており、充電の手間が減り機器の長期使用が可能になります。結果として買い替えコストの削減にもつながります。
【特長3】安定した複数同時通信
IoTの進展により、家庭やオフィス、公共スペースでネットワーク接続デバイスが増加しています。従来のWi-Fiでは同時接続数に限界があり、多数の端末が頻繁に競合すると通信が不安定になりがちでした。しかし、Wi-Fi 6が採用した「OFDMA」と呼ばれる技術により、1つの周波数帯域を動的に分割して多数の端末に割り当てる仕組みが実現した。
これにより、より多くの端末が同時に通信可能になり、空港や駅、ショッピングモールなど端末が密集する環境でも、快適にWi-Fiが利用できるようになります。
【特長4】強化されたセキュリティ
Wi-Fi 6では、WPA2に代わる最新の無線LANセキュリティ規格である「WPA3」が採用されています。WPA3はWPA2の脆弱性を解消し、より高いレベルの安全性と堅牢性を実現しています。企業や家庭で増えつつあるIoTデバイスからの重要データの漏洩リスクなどを最小限に抑え、安心してWi-Fiを利用できる環境が整備されました。
Wi-Fi 7について
ここでは、Wi-Fi 7について解説します。
次世代のWi-Fi 7とは
Wi-Fi 7は Wi-Fi 6・E に続く次世代のWi-Fi規格で、IEEE 802.11beとしても知られています。2023年12月の電波法施行規則改正に伴い、認可が下り日本国内でも利用できるようになりました。Wi-Fi 6の技術を基盤に、さらなる高速化と低遅延を実現します。Wi-Fi 7は、これまでのWi-Fi技術を大きく進化させることで、未来のネットワークインフラを支える重要な技術となるでしょう。Wi-Fi 7の特長、Wi-Fi 6と比べて優れている点とは?
Wi-Fi 7には、以下4つの特長があります。
【特長1】 超高速通信
Wi-Fi 7は、最大46Gbpsを超える通信速度を実現します。米インテルと米Broadcomが行ったデモにおいて、Wi-Fi 6が1Gbps、Wi-Fi 6eが2Gbpsの通信速度を示す一方で、Wi-Fi 7は5Gbpsを超える速度を記録しています。この高速通信により、8K映像のストリーミングやAR/VRなどの大容量データをスムーズに扱うことができるようになります。また、「MLO」技術を利用することで、2.4GHz、5GHz、6GHzの複数の周波数帯を同時に利用可能です。これにより、通信容量の拡大と安定性の向上が期待できます。
【特長2】 低遅延
Wi-Fi 7はレイテンシー(遅延時間)の改善にも注力しています。Wi-Fi 6Eですでにレイテンシーは大きく改善され通常時はあまり差がありません。通信が不安定な場合はWi-Fi 7のほうがさらに低遅延を実現しています。アメリカのテクノロジーメディアAndroid Policeが公開している実測データでは、通信環境が悪い場合の通信における安定性がWi-Fi 7で大幅に向上していることが確認されています。
【特長3】 より多くのデバイスと同時接続
Wi-Fi 7では、 Wi-Fi 6・6Eより多くのデバイスを同時に安定して接続する能力が強化されています。Wi-Fi 6Eでは「8×8 MU-MIMO」が採用されていましたが、Wi-Fi 7では「16×16 MU-MIMO」が導入され、接続効率が2倍に向上しました。これにより、スマートホームデバイスやIoT機器など、複数のデバイスが同時に接続される環境でも、安定した通信が可能となります。
【特長4】 周波数の利用効率向上
Wi-Fi 7では、Multi-Resource Unit技術が導入され、無線通信における周波数の利用効率が大幅に向上しました。従来は1ユーザーに対して1つのRUが割り当てられていましたが、Wi-Fi 7では1ユーザーに複数のRUを割り当てができるようになりました。これにより、周波数帯域の効率的な利用が可能となり、同じ周波数帯域内でより多くのデバイスが高品質な通信を行えます。
まとめ
本記事では、Wi-Fi 6とその次のWi-Fi 7について解説しました。
Wi-Fi 6による多数同時接続と高速大容量化に続き、Wi-Fi 7ではさらに超高速と低遅延が実現されます。
今後、Wi-Fi 7対応のハードウェアがさらに市場に広がることで、私たちの生活やビジネスにどのような影響を与えるのか、引き続き注目していきましょう。