Zynq-7000 SoCは、ザイリンクス社が提供するSoC(System-on-a-chip)です。Zynq-7000 SoCは、プログラミング可能なFPGAとARM CPUをワンチップ上に搭載した低消費電力なSoCです。
Zynq-7000 SoCの製品ライン、仕様
Zynq-7000 SoCのラインアップと仕様は以下の通りです。
機能 | Zynq-7000S | Zynq-7000 | |
---|---|---|---|
デバイス | Z-7007S, Z-7012S, Z-7014S | Z-7010, Z-7015, Z-7020 | Z-7030, Z-7035, Z-7045, Z-7100 |
プロセッサ コア | シングル コア Arm® Cortex™-A9 MPCore™ | デュアル コア Arm Cortex-A9 MPCore | |
最大周波数 | 最大 766MHz | 最大 866 MHz | 最大 1GHz |
外部メモリのサポート | DDR3、DDR3L、DDR2、LPDDR2 | ||
主なペリフェラル | USB 2.0、Gigabit Ethernet、SD/SDIO | ||
専用ペリフェラル ピン | 最大 128 | 最大 128 | 128 |
Zynq-7000 SoCとは
Zynq®-7000 SoC ファミリは、Arm® ベース プロセッサのソフトウェア プログラマビリティと FPGA のハードウェア プログラマビリティを組み合わせることで、解析機能やハードウェア アクセラレーションを可能にし、シングル デバイスに CPU、DSP、ASSP、およびミックスド シグナル機能が統合されています。シングル コアの Zynq-7000S とデュアル コアの Zynq-7000 デバイスを選択できる Zynq-7000 ファミリは、単位ワットあたり最高の価格性能比を実現し、さまざまなアプリケーション要件に対応できる完全にスケーラブルな SoC プラットフォームを提供します。
Zynq-7000 SoCは、ザイリンクス社が提供するSoCです。
SoCとは
SoCとは、プロセッサ、メモリ、I/Oなどを1つの半導体上に載せる技術のこと。他の半導体と比べ、消費電力や製造コストの面で優れているのが特徴。
SoCは、1つの半導体上に多くの機能を搭載するため、装置を小型化できる。これにより、部品数が削減できるため、消費電力や製造コストも削減できる。
Zynq-7000 SoCは、プログラミング可能なFPGAとARM CPUをワンチップ上に搭載しています。
FPGA(読み方:エフピージーエー)とは
FPGAは、集積回路の種類の一つ。FPGAとは、「現場で書き換え可能な論理回路の多数配列」を意味する「Field Programmable Gate Array」の略。ユーザーが現場(Field)でプログラムを書き換えられる。
一般的に、FPGAは、大容量・高速データ通信能力を持つ、というメリットがある一方で、場合分け処理や周辺機器操作が困難である、というデメリットもあります。
このため、Zynq-7000 SoCは、FPGAとARM CPUをワンチップ上に搭載しています。これにより、FPGAが持つ大容量・高速データ通信能力を実現しながら、ARM CPU側で場合分け処理や周辺機器操作を実現しています。
パーシャルリコンフィギュレーションによる50%の総消費電力削減
Zynq-7000 SoCには、パーシャルリコンフィギュレーション機能があります。
パーシャルリコンフィギュレーションとは
パーシャルリコンフィギュレーションとは、FPGAの一部分のみをリコンフィグレーションすること。このため、FPGA内全ての回路を書き換えることなく、デザインの再構築を容易に実現できる。これにより、コストおよび消費電力も削減できる。
このパーシャルリコンフィギュレーション機能によって、スタティック消費電力(静止消費電力)を削減できます。
スタティック消費電力(静止消費電力)とは
スタティック消費電力(静止消費電力)とは、デバイスに電源が投入されたときにデバイスで使用される電力のこと。
これによりZynq-7000 SoCは、前世代ファミリよりも総消費電力を最大 50%削減しています。
- Zynq-7000 SoCは、FPGAとARM CPUをワンチップ上に搭載している
- 大容量・高速データ通信能力と場合分け処理や周辺機器操作を同時に実現
- パーシャルリコンフィギュレーション機能によって前世代ファミリよりも総消費電力を最大 50%削減
Zynq-7000Sの特徴
Zynq-7000Sは、Zynq-7000 SoCの中でも低コストなデバイスです。Artix-7ベースのFPGAとシングルコアCortex-A9プロセッサをワンチップ上に搭載しています。
シングルコアとは
「シングルコア」とは、1つのプロセッサの中にコアが1つ内蔵する技術。1つのプロセッサの中にコアが複数入っている「マルチコア」との対比で使用されることが多い。また、シングルコアのプロセッサは「シングルコアプロセッサ」と呼ばれている。
Zynq-7000Sの使い方(アプリケーション)
Zynq-7000Sは、以下のアプリケーションに適しています。
- 多軸モーター制御
- マシン ビジョン
- プログラマブル ロジック コントローラー
Zynq-7000の特徴
Zynq-7000は、Zynq-7000Sよりも高度なデバイスです。28nm Artix-7 または Kintex-7ベースのFPGAとデュアルコアCortex-A9プロセッサをワンチップ上に搭載しています。
デュアルコアとは
デュアルコアとは、マルチコアの種類の一つ。コアを2つ搭載したマルチコアのこと。
マルチコアとは
マルチコアとは、1つのCPUの中に複数のCPUコアを内蔵する技術のこと。マルチコアのプロセッサは、複数の処理を並列しておこなうことで、シングルコアに比べ高い処理能力を実現している。
Zynq-7000の使い方(アプリケーション)
Zynq-7000は、以下のアプリケーションに適しています。
- ADAS
- 医療用内視鏡
- スモールセル ベースバンド
- プロ仕様カメラ
- マシン ビジョン
- キャリア イーサネット バックホール
- 多機能プリンタ
なお、シングルコアとマルチコアの違いにつきましては、次のページをご参照ください。
- Zynq-7000S:低コストなデバイス
- Zynq-7000 :Zynq-7000Sよりも高度なデバイス
Zynq-7000 SoCの入手方法
Zynq-7000 SoCは、以下の販売代理店で購入できます。
Zynq-7000 SoCの開発環境
Zynq-7000 SoCに対応した代表的な開発環境は以下のとおりです。
- Vivado
- SDSoC開発環境
- IAR Embedded Workbench for ARM
Zynq-7000 SoCの評価ボード
搭載CPU | 特徴 | 対象 | データシート | |
---|---|---|---|---|
MiniZed | 7Z007S | USB、Wi-Fi、Bluetoothなどの周辺機器(ペリフェラル)を搭載 | エントリーレベルのZynq開発者 | MiniZedのデータシート |
Zybo Z7: Zynq-7000 ARM/FPGA SoC Development Board | XC7Z010 XC7Z020 |
SDSoC開発環境のライセンス(1年間)付き | SDSoC開発環境を使ってZynq-7000 SoCの評価・開発がしたい方 | Zybo Z7: Zynq-7000 ARM/FPGA SoC Development Boardのデータシート |
Zynq-7000 SoC Evaluation Kit | XC7Z020 XC7Z045 |
検証済みのリファレンスデザインや、業界標準のFPGAメザニンコネクタ(FMC)を同梱 | 機能の拡張・カスタマイズをしながら評価・開発したい方 | Zynq-7000 SoC ZC702 Evaluation Kitのデータシート |
MicroZed Evaluation Kit | XC7Z010 | 評価ボードとしても組み込み可能なシステムオンモジュール(SOM)としても使用可能 | 将来的にMicroZed Evaluation KitをSOMとして使用して製品化したい方 | MicroZed Evaluation Kitのデータシート |
MiniZed
MiniZedは、7Z007Sを搭載した低価格な評価ボードです。MiniZedは、USB、Wi-Fi、Bluetoothなどの周辺機器(ペリフェラル)が搭載されているため、micro-USBケーブルを接続するだけで起動します。
これらの特徴から、MiniZedは、エントリーレベルのZynq開発者に最適な評価ボードです。
Zybo Z7: Zynq-7000 ARM/FPGA SoC Development Board
Zybo Z7は、低価格な評価ボードです。XC7Z01を搭載したZybo Z7-10と、XC7Z02を搭載したZybo Z7-20の2種類があります。
Zybo Z7にはSDSoC開発環境のライセンス(1年間)が付いています。
このためZybo Z7は、「SDSoC開発環境を使ってZynq-7000 SoCの評価・開発がしたい」という方に最適の評価ボードです。
Zynq-7000 SoC Evaluation Kit
Zynq-7000 SoC Evaluation Kitは、XC7Z020を搭載したZynq-7000 SoC ZC702 Evaluation Kitと、XC7Z045を搭載したZynq-7000 SoC ZC706 Evaluation Kitがあります。
Zynq-7000 SoC Evaluation Kitは、検証済みのリファレンスデザインや、業界標準のFPGAメザニンコネクタ(FMC)を同梱しています。
FPGAメザニンコネクタ(FPGAメザニンカード・FMCとは)
FPGAメザニンコネクタ(FMC)とは、基板に機能を追加するため取り付けられた小型の基板であるメザニンコネクタ(メザニンカード)のうち、FPGA向けに策定された規格。
このためZynq-7000 SoC Evaluation Kitは、「機能の拡張・カスタマイズをしながら評価・開発したい」という方に最適の評価ボードです。
MicroZed Evaluation Kit
MicroZed Evaluation Kitは、低コストな評価ボードです。
MicroZed Evaluation Kitは、スタンドアロンモードでは評価ボードとして使用できるほか、組み込み可能なシステムオンモジュール(SOM)としても使用可能です。
SOM(読み方:エスオーエム)とは
SOMとは、システム・オン・モジュールの略。SOMとは、CPUやメモリなどが一体になったボードを指す。
これらの特徴から、MicroZed Evaluation Kitは、「将来的にMicroZed Evaluation KitをSOMとして使用して製品化したい」という方におすすめの評価ボードです。
Zynq-7000 SoCの対応OS
Zynq-7000 SoCに対応しているOSは、以下の通りです。
- Linux
- eT-Kernel
- FreeRTOS
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(弊社製品)
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard+M(同上)
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)+Linux(同上)
弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介
高性能リアルタイム処理向けRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard」
μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standardは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOSです。
μC3/Standardは、高性能プロセッサがより高度なリアルタイム制御に耐えられるよう、割込み禁止時間を極力なくし、割込み応答性を最重要課題として設計したRTOSです。
ARM Cortex-Aシリーズ、ARM Cortex-Rシリーズだけでなく、高性能な ARM Cortex-MやRenesas RXシリーズにも対応しています。
- 32/64bitの高性能プロセッサに最適化
- 割り込み応答性を高め、32/64bitの高性能プロセッサ向けに最適化されたμITRON4.0仕様のカーネル。
- 豊富なプロセッサ・サポート
- 業界随一のプロセッササポート実績があり、技術サポートも充実しています。CPUの選択肢を広げ、機会費用を抑える事ができます。業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。ご使用予定のデバイスで直ぐに開発着手が可能で、ご質問に対して24時間以内の1次回答を徹底しています。
- マルチコア対応
- 組込み機器向けに最適なAMP型カーネル。マルチコアによって、リアルタイム性能を強化します。
- 豊富なデバイスドライバを用意
- I2C, SPI, GPIO, SDなどのデバイスドライバをオプションで用意。(UART, Timer, INTCはμC3に、EthernetドライバはμNet3に付属しています。)
詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。
マルチコアAMP拡張版RTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard+M」
μC3/Standard+Mは、μC3/StandardにAMP型のマルチコア拡張を追加したマルチコアプロセッサ向けのリアルタイムOSです。
μITRON4.0のスタンダード・プロファイルをベースに、AMP型の特徴を活かしたコア毎の処理・リソースの割り当て、コア間連携のためのAPIを追加しています。
ARM Cortex-Aシリーズを中心にマルチコアのMPUをサポートしています。
- リアルタイム処理に最適なAMP型カーネル
- 自由にタスクや資源を各CPUに割り当てることで、システムの負荷分散が容易に実現できます。
- μITRON APIによるCPU間通信機能
- タスク間通信などの機能をCPU間通信でも実現ができ、シングルコアと同様にプログラミングができます。
- 一括リンクによるコード効率の向上
- コア別のプログラムを一括リンクすることで、より効率の良いプラグラミングができます。
- 多彩なミドルウェアや豊富なデバイスドライバを用意
- μC3/Standard対応のミドルウェアやデバイスドライバを利用できます。
詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。
LinuxとRTOSの共存ソリューション「μC3(マイクロ・シー・キューブ)+Linux」
μC3+LinuxはマルチコアCPUにLinuxとRTOSを共存させ、OS間の通信を可能にするソリューションです。
種類の異なった2つのOSを共存させることで、RTOSのリアルタイム性能とLinuxが持つ豊富なソフトウェア資産を有効に活用することができます。
- 異なったタイプのマルチコアCPUに対応
- ホモジニアス(同一プロセッサ・コアによる構成)とヘテロジニアス(異なるプロセッサ・コアによる構成)の両方に対応しています。
- メーカー提供のLinuxディストリビューションに対応
- CPUベンダーが標準でサポートするLinuxに対応し、アプリケーションの開発が迅速にできます。
- OS間通信をサポート
- メッセージ形式のAPI(RPMsg)を使って、OS間の通信を容易に実現できます。
- OpenAMP仕様を採用
- Multicore Associationによって標準化されたOpenAMPの仕様に対応しています。
- RTOSによる高速ブート
- μC3を先に起動することで高速起動ができます。
詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。
μC3のライセンスの種類・詳細
ライセンスの種類
ライセンスの種類は3つあります。
- 研究開発用プロジェクトライセンス
- 開発量産用プロジェクトライセンス
- プラットフォームライセンス
研究開発用プロジェクトライセンス
研究開発用プロジェクトライセンスは、研究開発のみ可能なライセンスです。ライセンス購入時の段階で、製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めです。
研究開発用プロジェクトライセンスのライセンス費用は、このあとご紹介する開発量産用プロジェクトライセンスの60%の価格です。
有償の保守契約に加入中の場合、開発量産用プロジェクトライセンスのライセンス費用の40%オフの価格でアップグレードが可能です。
開発量産用プロジェクトライセンス
開発量産用プロジェクトライセンスは、研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンスとなります。開発量産用プロジェクトライセンスの対象製品の範囲には、1種類の製品型番だけでなく、その製品ファミリ(派生機種)が含まれます。
有償の保守契約に加入中の場合、プラットフォームライセンスのライセンス費用との差額でアップグレードが可能です。
プラットフォームライセンス
プラットフォームライセンスは、プロジェクトライセンスの対象範囲を広げたライセンスです。プラットフォームライセンスの対象製品は、1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリが範囲となります。サイトライセンスではございません。
※弊社のライセンスはプロジェクトライセンスの形式を採っております。ご購入時に該当プロジェクトの名称をご登録頂く必要があり、その際、「計測機器」などの抽象的な名称ではなく、具体的な名称を頂戴しております。
お客様のご要望をお聞きした上で適切な範囲を設定させて頂きますので、先ずは、担当営業にご相談下さい。
ポイント
- 研究開発用プロジェクトライセンス:製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めなライセンス
- 開発量産用プロジェクトライセンス:研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンス
- プラットフォームライセンス :1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリを範囲とするライセンス
ライセンスの詳細
- ライセンス費用の金額・計算方法:ライセンス購入時の固定の一括払いのみでご使用いただけます
- 開発人数制限 :無(ただし同プロジェクト内)
- 提供形態 :ソースコード
- 使用範囲 :定義されたプロジェクト内
- 使用CPU :型番固定ではなくCPUシリーズ(例:STM32F4シリーズ)
- μC3/ConfiguratorはCPUシリーズ毎に用意されています
ライセンスの価格などの詳細については、下記よりプロダクトガイドをダウンロードしてご覧ください。
保守について
製品定価には契約日の翌月1日から6ヶ月分の無償保守が含まれています。その後、有償で保守を継続することが可能です。
また、年間保守費用は製品定価の40%になります。
無償保守期間終了後、継続して有償保守サービスにご加入いただいた場合は、製品定価の20%になります。(ただし、初年度分の保守とライセンスをセットで購入された場合は、初年度分に限り製品定価の15%になります。)
*研究開発用プロジェクトライセンスの保守費用は開発量産用プロジェクトライセンスの定価の20%になります。
保守サービスには以下が含まれています。
- メールによる技術サポート(1営業日以内に1次回答)
- 製品の無償バージョンアップ
Zynq-7000 SoCとμC3/Standardの導入事例
- 電子機器メーカー製 小型診断装置
- 電子機器メーカー製 人工衛星の姿勢制御と電源制御
- 機器・貨幣処理機器メーカー製 識別機
Zynq-7000 SoCとμC3/Standard+Mの導入事例
- 検査装置メーカー製 スマートカメラ
- 事務機器、光学機器メーカー製 3Dプリンタ
- 計測器メーカー製 電力計
- 通信機器メーカー製 無線機